ここまでいくつもの作品を見てきたが、ベルニーニの真髄はまだまだこれからだ。その作品に触れられる美術館へ向かおう。地下鉄A線でスパーニャ駅下車、広いボルゲーゼ公園を東に歩いて行くと、ボルゲーゼ美術館がある。ここは予約制なので、事前にネットなどで予約しておくことが肝心だ。
まず最初の作品は「アポロとダフネ」(1622~1625)。アポロはダフネに恋してしまう。我がものにしようと迫るアポロに対して、ダフネはこれを拒絶。対抗手段として父ペネウスにわが身を月桂樹の木に変えてくれるよう依頼する。
まさに変身しようとするダフネの体は、先端から徐々に月桂樹の枝に変わって行こうとしている。指、つま先、髪。だが、アポロの手も、まだ人間であるダフネの体に食い込みつつある。
そんな一瞬の攻防を、ベルニーニは空前絶後のテクニックで彫り上げた。こんなに隅々まで繊細な姿が、石で出来ているなんて、とても思えない。
次は「プロセルピーナの椋奪」(1621~1622)。ガイア(大地)の娘プロセルピーナが冥界の王プルートから逃れようとする必死の姿が表現される。下部には番犬ケルベロス。
プロセルピーナの柔らかくしなやかな肌に食い込むプルートの指。改めて言うが、これが石で出来ているなんてとてもとても!
逃れようとするプロセルピーナの必死の表情、風になびく髪の動きなど、ベルニーニの才能がほとばしる作品になっている。この2作を見るだけでも、ローマに来てよかったと思えるだろう。