プティ・パレ(パリ市立美術館)は1900年の万国博会場として建設されたもの。主に19世紀から20世紀の絵画作品が収蔵されている。
入って2階に上がる階段は、緩やかな螺旋階段。
大きな輪を描いて上昇して行く様は優雅だ。
奇をてらったものではなく、派手でもない。
が、そっとクラシックの序章が奏でられようとする瞬間に似て、ソフトな緊張感が伝わってくる階段だ。
この美術館には、20世紀初頭のベルエポックのパリを代表する舞台女優サラ・ベルナールの肖像(ジョルジュ・クレラン作)が収蔵されていて、そのあでやかさに見入ったことがあった。
パリの街を歩いていて、突然ビルの横壁に描かれた巨大な絵に遭遇した。
大きな長い階段。重そうな荷物を持った紳士がひたすら階段を昇る。
その先、頂上には少女が手を振っている。
「早く、早くここまで来て」と、叫んでいるようにも見える。
階段下では、二人を応援するかのように演奏を続けるピアノとバイオリン。
あの二人は、多分親子。
長い間、何らかの事情に阻まれて会うことが叶わなかった。
それが やっと会える。
トランク一杯のお土産を抱えて、父は娘の元へと急ぐ。
そんなドラマを連想させる壁画に しばし見とれてしまった。