「GARAN43/35」(東京都)
あなたのことを 絶えず考えているのに
あなたの顔が どうしても思い出せない
気がついてみると ふと耳にした音楽の一節を
くり返しくり返し 口ずさんでいるのだ
あなたに会いたいと 思うのだが
それは情熱というより むしろ好奇心で
自分が いったいどうなっているのか
もう一度 あなたの前で確かめたいのだ
それから先のことは 思い浮かばない
あなたを抱くことも 想像できない
ただあなた以外の世界が ひどくけだるく
僕は高速度撮影の 映画の中の俳優のように
ゆっくり 煙草に火をつけるのだ
すると あなたなしで生きていることが
一つの快楽のようにも 思えてくる
あなたはもしかすると いつか僕が他国で見た
時を経た美しい彫像の 一つかもしれない
そのかたわらで 噴水は高く陽に輝いていた
(谷川 俊太郎)
「れとろっく」(東京都新宿区)
「翔笑伝」(埼玉県和光市)