しばらく中断していた「心ふるえる風景」を再開します。
ピアノの詩人フレデリック・ショパンは1831年、21歳でパリに移り
39歳で病死するまでの18年間のほとんどをパリで過ごした
従って彼の遺骸は パリの墓地に埋葬されている ペール・ラシェーズ墓地
彼の墓は 墓地の中央入口からほど近い場所にあった
墓石の上部には うつむく少女の像があり
石碑の中央にショパンの横顔と名前が刻まれている
墓前には花束が絶えず 私が訪れた時も何人もの参拝者の姿があった
パリ中心部のマドレーヌ聖堂で行われた葬儀には 3千人もが集まったといわれる
その際 彼の心臓は故国ポーランドに戻されたが
こちらの墓の遺体の上には 故国の土が撒かれたという
墓の前にたたずんでいると どこからともなく彼の遺作「ノクターン20番」の調べが
地面から湧き上がってくるような 幻想にとらわれる気がした
一時期彼とジョルジュ・サンドが暮らした場所にある ロマン派美術館には
彼の左手の「デスハンド」が保存されている
あの繊細なメロディを紡ぎ出した天才の手は
意外にもというべきか 当然というべきか
節々の関節が目立つ 力強いフォルムのまま残されていた