上野の東京国立博物館は現在、本館、表慶館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館の5館で構成されている。その中から、まずは本館を見て行こう。
前回紹介したように、スタート時はジョサイア・コンドルによる建物だったが、これは1923年の関東大震災によって大きな損壊を被り、改めて新館が建設された。
鉄筋コンクリート造で、設計は渡辺仁。彼は横浜のホテルニューグランド、東京丸の内の第一生命館などを設計した建築家だ。完成は1937年。まさに第二次世界大戦の足音が忍び寄る時代だけに、日本の独自性を強調した造りになっている。
頭上に和風の屋根を載せた帝冠様式で造られており、てっぺんには鬼瓦、下に格子と「和」を並べた玄関アーチが特徴的だ。
中に入ると、まず目を見張るのは堂々と広がる中央階段。
モザイクタイルの床から持ち上がる視線を奥の壁に移すと、中心に時計が飾られる。その模様は牡丹や蓮華などを組み合わせた想像上の花である「宝相華紋」風のレリーフによって飾られている。
階段踊り場にはステンドグラス。アールデコ調のデザインは宮内庁技師が手掛けたものだという。
照明も丁寧なしつらえとなっている。
ちょうど正月時期の訪問では、中二階正面に華麗な生け花が飾られて、華やかな雰囲気が広がっていた。
上から見た下り階段の流線形も見飽きない。
特別企画として、貴賓室も開放されていた。椅子には鳳凰と龍が一体化した吉祥模様が配されて重厚な趣だ。
もう1度階段を見下ろしながら一階に降りて、今度は収蔵作品を鑑賞してゆくことにしよう。
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