ヴェネツィアには数多くの教会があり、その教会の中で驚くほどの芸術作品に出会うことが出来る。そんな驚きの教会巡りを始めよう。まず最初はサン・ザッカリア教会。
大勢の観光客でにぎわうスキアヴォーニ河岸から細い道を陸側に少し入ると、一転して静かな空気に包まれた広場がある。そこに、軽快に立ち上がるルネサンス様式の教会が、サン・ザッカリア教会だ。
当初ゴシック様式で設計されたが、途中でマウロ・コンドッチに工事が引き継がれ、1515年現在の様式によって完成された。
中は暗い。外の明るさから目が慣れるまで少し時間がかかった。
だが、慣れてくると室内全体を埋め尽くす絵画の洪水に思わず驚きの声を漏らしてしまった。
中でも左側壁面にあるジヴァンニ・ベッリーニの「玉座の聖母と諸聖人」は、彼の代表作とされる傑作だ。
暗い中近づいてよく見ようと歩み寄っていくと、突然絵が明るくなった。この絵には照明がついていて、1ユーロを入れると3分間(多分)だけ照明が点くようになっている。
幼子キリストを抱いて立つ聖母マリア。その表情は安らかだ。すくすくと育ち始めた我が子への安堵感。母としての満ち足りた慈しみの心が、まなざしを優しくさせる。
その聖母子を囲むのが、左側に聖ペテロと聖カタリナ、右側に聖ルチアと聖ヒエロニムス。4人の聖人だ。
4人の下側に音楽を奏でる乙女が控える。
ヴェネツィア派絵画の創始者とされるベッリーニによる、深い思索の中に存在する聖者たちの姿だ。
反対側の壁面も絵画だらけ。その中で最も心惹かれたのがアントニオ・パレストラの「羊飼いの礼拝」だ。こちらは馬小屋で誕生したキリストを羊飼いたちが祝福の礼拝をするという場面だ。
驚きとともに幼子に見入る羊飼いたち。
輝くキリストの光を受けて照らし出されるマリアの、なんとも幸せに満ちた表情。
人々の動きも一体となって、救世主誕生の喜びが周囲に広がってゆく。この絵を見ているだけで、こちらも幸せを分け与えられたような気持になっていた。地元のヴェネツィアっ子にも広く愛されている絵だという。
主祭壇の上にはペレグリーニ作の「栄光のサン・ザッカリア」。
聖ザッカリアの見事な彫像はアレッサンドロ・ヴィットリアの作だ。この教会の名前になっている聖ザッカリアは洗礼者ヨハネの父。
こんな劇的なシーンを描いた作品もある。
その近くにあった優しさに溢れた聖母像に一礼して教会を後にした。
新ブログでも教会巡りを始めましたが、従来のブログ「イタリアの誘惑」ではヴェネツィアの教会を30ほど紹介しています。参考になさってください。
http://jun-gloriosa.cocolog-nifty.com/blog/venezia_1/index.html
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