トレアルキ橋。「3つのアーチ」という意味の橋名で、橋の形からこの名称になった。本土側に近い場所に位置し、かつては本土側から運ばれる物資輸送の大動脈となった運河の入口にある橋だ。
結構高い勾配の階段がついている。この階段が最高の観覧席“祭りの階段”になる日がある。
それが、6月に行われる長距離ボートレース「ヴォガロンガ」。このレースのメインコースになっていて、階段から1000隻以上のボートがこの橋を通る光景をつぶさに眺めることが出来る。ヴェネツィアが祝祭都市であることを強く印象付けられるシーンだ。
私が訪れた年は天候も絶好で、レーサーも観客も一体となって楽しむ姿があふれ、街中に歓声が響き渡っていた。
橋の外壁に、まるで祭りを楽しむかのようなこんなユーモラスなイラストが付けられていた。
次の階段は「暗闇の階段」。フェニーチェ劇場近く。ちょっとしたソットポルティゴ(アーケード)になっている通りがあった。暗い穴倉のような場所で、すぐ前方に光の差し込む階段が見え、右側には小運河の水が、ひたひたと音をたてて流れていた。
何となく立ち止まり、その音を聞いていたら、旅姿の女性がバッグを抱えながら足早に私を追い越していった。ただの観光客ではない、少し切迫した荒い呼吸と乱れた足音を残したまま・・・。
標識に書かれている「ponte de le tette」とは『おっぱい橋」の意味だ。サンポーロ地区の小さな運河に架かる小さな橋。階段の数も前後6段ずつ。でもあえて取り上げたのは、その名前に歴史が隠されているからだ。
16世紀のヴェネツィアでは同性愛が流行していた。このままでは国の宝である子供の数が減少する一方だ。時の政府は。男性に女性の関心を高めさせようと、娼館の女性たちに。おっぱいの露出による挑発を奨励した。
その娼婦の館があったのがこの階段の前だったため、こんな名前が付けられ、今も残っているという。
華やかなヴェネツィアの表舞台とは違った裏の歴史を刻む階段というわけだ。
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