新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

パリを歩く⑦ どこかミステリアスムードに包まれた教会に入る。シャルドネ教会

2019-03-12 | パリ・街歩き

 サン・ニコラ・デュ・シャルドネ教会に入った。

 最初に強いインパクトを受けたのが「飛ぶ天使と見上げる老婆」。ジャン・コリニョンの作品。老婆の悲痛な表情が、ただならぬ事件を連想させる。

 中央祭壇には上部に聖母が描かれ、

 中心に聖母子像が置かれている。

 見渡すと、周囲にもあちこちに様々な彫像、レリーフが配置されれているのが特徴的だ。

 この礼拝堂も上部には女性像があり、

 その下部には倒れかかった老人がいる。先ほどの「天使と老婆」の構図と関連させたものなのだろうか。

 立派なパイプオルガンにも子供たちの像が載っている。

 何かに縋るかのように、必死に手を合わせるこんなレリーフも。

 どこか悲壮感を漂わせる女性像。

 黒い聖母像。スペインでは見たことがあったが、フランスでは黒い顔をした聖母とは初めての対面だ。


 全体的になぜかミステリアスな雰囲気が充満している教会だった。


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パリを歩く⑥ モディリアニが、サルトルが、ロバート・キャパが。芸術家や文学者たちがたむろしたカフェを巡る

2019-03-09 | パリ・街歩き

 サンジェルマン・デ・プレからモンパルナスにかけての地区は1900年代前半、エコールドパリの芸術家や文学者たちが集うカフェの聖地だった。今も健在なそんなカフェを訪ねて歩いた。

 サンジェルマン・デ・プレ教会のすぐ近くにあるカフェ・ド・フロールに入店し、朝食を摂った。ここには哲学者サルトルとボーヴォワールがよく訪れた。午前中は原稿の執筆、午後は友人との語らいに時間を過ごした場所だ。「フロールは私たちにとって我が家のようなものだった」(サルトル)。

 机に敷かれた紙には、開店当時の店の写真が載せられていた。
 
 そのすぐ隣、教会側にはドゥ・マゴがある。以前は中国の絹を売る店だったため中国人形が飾られていたが、カフェに変わってもその人形は健在だという。ちょうどこの時は店の改装中で閉店していた。ここも実存主義者たちのたまり場だった。

 カフェ・ボナパルト。赤と青のひさしが目印だ。ここは近くの国立美術学校の生徒たちでにぎわう店。地下には店名の通りナポレオンの写真が飾ってあったりする。

 サンジェルマン大通りの向かい側にはブラッスリー・リップがある。かつてはヘミングウエイが足しげく通った店だ。

 少し足を延ばしてモンパルナス地区に進もう。地下鉄ヴァヴァン駅のすぐ前にあるのが、ラ・ロトンド。1903年のオープン以来エコールドパリの芸術家たちを中心に多くの若者たちが集まった場所。私はモディリアニの足跡を訪ねての行動の際、何度もこの店に寄った。


 店内にはモディリアニが描いた妻ジャンヌの絵を始めとして、何点もの絵の複製が飾られている。モディリアニはこの店のナプキンに即席で客の似顔絵を描き、わずかな収入で酒を買っていた時代だった。

 重厚な褐色に統一された店内は、とても居心地が良かった。

 ロトンドの窓を通してル・ドームの店が見える。ピカソ、フジタ、キャパなども常連だった老舗のカフェ。今は高級レストランになっている。

 ロトンドの近く、モンパルナス大通りを行くとクーポールがある。このテラス席では、1つの運命的な出会いがあった。

 ロバート・キャパがまだ無名の頃、モデルを探して街を歩いていて、この店のテラス席に座る青い目の女性に興味を持った。彼女を話しているうちにキャパは彼女の友人を紹介された。

 その人こそゲルダ・タローだった。ゲルダは自身もカメラマンとして活動する傍らキャパのマネージメントを行い、スペイン内戦にも2人で遠征した。キャパの代表作となった「崩れ落ちる戦士」の撮影も彼女のアシストなしには撮れなかったといわれている。

 そんな2人の出会いのきっかけがこのテラス席だった。

 その向かい、ル・セレクトもカフェ文化の一角を担っていた。今も芸術家が集まるスポットという。

 「フランス人は右岸で消費し、左岸で考える」ということわざがあるが、それもこうした歴史を踏まえたもののようだ。





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パリを歩く⑤ パリ中心部に残る貴重なロマネスク建築。サンジェルマン・デ・プレ教会

2019-03-05 | パリ・街歩き

 地下鉄デ・プレ駅を出るとすぐ、前方に白く堅牢な塔がシュッとそびえる。ゴシックやバロックと違って決して派手ではなく、土地のたたずまいに溶け込むかのような落ち着きを感じさせる。
 それが現存するパリ最古のロマネスク建築、サンジェルマン・デ・プレ教会だ。

 起源は542年、時のパリ王キルデベルト1世が、聖遺物などを納めるために建築。571年、死去したパリ司教サンジェルマンをここに納めたことから今の名称が使われるようになった。以後何度も改築が行われたが、外形はロマネスクが残されている。

 その聖ジェルマン像がこれ。まるでジャコメッティの彫刻のように細く長く引き伸ばされた木像だ。

 右手にあるのが「慰めの聖母像」。1340年制作という大理石の像で、地元の人達の厚い信仰の対象となっている。

 ちょっとコミカルにも見えるレリーフ。これはモンゴメリー・ラバル奉献の図。実は1980年の制作だとか。道理で今っぽい感じの作品だ。

 フランシスコ・ザビエルの礼拝堂があったが、ここにはジャン・カシミール像があった。元々はポーランド王だったが、王位を退いてからフランスに住まい、ここデ・プレ教会の修道院長になったという変わった経歴の持ち主だ。

 祭壇の後方に、こんなたおやかな聖母像があった。

 20世紀後半に、教会近くの壁の土台から発見されたという像。13世紀中ごろのものと推定される。優しさと慈しみがほのぼのとにじみ出るような、素晴らしい像に出会えた。

 また、デカルトの墓碑がここにあった。

 フランス合理主義の先駆けであるデカルトがこんな場所に眠っているとは知らなかった。

 別の礼拝堂の女性像。これも美しいものだ。

 教会を出て地続きの庭を見たら、頭でっかちの彫刻が立っている。これはピカソの作品で、「アポリネール礼賛」。ロマネスクの最古の建築の隣りで革新のピカソ作品に出会えるとは、これも意外なハプニングだった。 

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パリを歩く④ セーヌ川左岸、ピカソが怒りと共に「ゲルニカ」を描き上げたアトリエを見つけた。

2019-03-02 | パリ・街歩き

 セーヌ川左岸のポンヌフとサンジェルマン橋との間、オデオンにつながるグラン・オーギュスタン通りを南に向かうとまもなく、立派な門構えの建物が見えてきた。

 たぶん、ここが・・・。

 プレートが掲げてあった。「パブロ・ピカソが1936年~1955年、このビルに住んだ。そして1937年にはゲルニカを制作した」。

 ゲルニカとはスペイン北部、バスク地方の都市の名前だ。当時ピカソの母国スペインでは、スペイン内乱と呼ばれる戦争が始まっていた。フランコ将軍の依頼を受けてドイツ軍は1937年4月26日、人口7000人の小都市に、3時間にわたる無差別空爆を行った。
それも、郊外にあった戦争資材生産工場の場所ではなく、中心部の市街地を破壊した。死傷者多数。それはバスク民族の戦意喪失を狙った意識的な攻撃だったとされる。

 ピカソはこのころ、5月に開幕するパリ万博のスペイン館への出品を依頼されていたが、爆撃の知らせを聞くと、一転してゲルニカ空爆への抗議の象徴となる作品制作を決めた。
 制作開始が5月11日、完成が6月4日という超スピードの精力的なものだった。そして出来上がった作品がこれだ。

 阿鼻叫喚。悲痛な叫びと悲しみ、そして怒りが渦巻く、唯一無二の絵がそこにあった。

 この作品が創られた現場がこの建物にあるアトリエだった。以前はフランス演劇界の大御所ジャン・ルイ・バローの稽古場として使われていた。彼は映画「天井桟敷の人々」のバチスト役を演じるなどの名優。同時にそこは作家ジョルジュ・バタイユが組織した反ファシズムの集会場でもあった。

 「ゲルニカ」は大きな反響を呼んだ。しかし、戦いはフランコ軍の勝利となり、スペインはファシズムが支配する国となった。

 このためピカソは作品「ゲルニカ」を破壊から守るためにアメリカに避難させた。
 長期間の避難状態が続いたが、1975年にフランコ将軍が死亡、政権も交代して1981年になってようやくゲルニカはスペインに里帰りすることが出来た。
 その数年後、公開場所のマドリード、ソフィア王妃芸術センターを訪れたが、建物周囲は銃を構えた複数の兵士が警備するという物々しい雰囲気に包まれていたことを、今も鮮烈に覚えている。


 そのアトリエ付近をもう少し歩こう。

 アトリエの家から少し移動した小道にアーケードがあった。

 アーケードを抜けるといかにも歴史がありそうな家。

 そしてまたアーチ。向こうはセーヌ川だ。

 その建物の壁面にあったモザイク。こんなちょっとした場所にも歴史を感じるものがあって、パリ散歩は全く飽きることがない。

 アーチをくぐったら、学士院の雄大なドームが出迎えてくれた。



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