春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

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ぽかぽか春庭「菫買いましょ野のスミレ・パンセソバージュ」

2012-03-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
2012/03/23
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>赤い花束車に積んで(1)菫買いましょ野のスミレ・パンセソバージュ

 アイデンティティ(略語ID)は、「自分は何者であり何をして生きる人間であるか」という個人の心の中に保持される概念。自我同一性。「自分が自分であること、自分として存在すること」。

 無理矢理「自己証明」などと和訳されていますが、アイデンティティというカタカタ語そのままで、あるいはIDと略された形で、「IDカード」「学生ID」など、使われています。
 パソコン用語としてのID、identification、は、「システムの利用者を識別するために用いられる符号」ということ。

 春庭という名をIDにしてからはや満9年が経ち、10年目に入ります。本名をネット検索すると担当授業名とか泣く泣く書いた論文が出てきて、なんだか自分じゃないみたい。本名よりも、「HALさん」「春庭」と呼ばれるほうが自分らしい気がします。
 
 何度か自己紹介してきたように、春庭とは、江戸時代の国学者本居春庭から名前を拝借しています。春庭は本居宣長の息子。盲目となったのちも、黙々と国学研究を続けた人です。そんな偉大な人に及びもつかぬは承知で、春っぽい名前が気に入って使い始めました。2003年には、「春庭」と検索すると、一番上に本居春庭が出てくるのは当然として、2番目には我がサイトが堂々出てきたのですが、9年たってみると、やたらに「春庭」という店名の花屋さんが増えていたり、新潟ではダイニングバーの店名になっていたり、春庭が増えています。春庭連盟の盟主にでもなろうかしら。

 春庭OCNカフェ日記のbbsページには「春庭カフェらパンセソバージュ」というタイトルをつけていました。9年たって「カフェラパンセソバージュ」を検索してみると、高知県にそういう名前のカフェレストランがありました。高知に行くことがあったら、絶対に寄ってみたい店です。たぶん、オーナーはレヴィ・ストロースのファンです。私もレヴィ・ストロースファンのひとりですから、きっとどのメニューの味とも相性がいいはず。

 「ラ パンセ ソバージュLa pensee sauvage」というのは、人類学者レヴィ=ストロース『野生の思考』(1962年)の原題です。(penseeにはeeの部分にアクサンがついているのですが、penséeが出ず、プレビューで確認したらLa pens醇Pe となってしまいました)
 私が『野生の思考』を読んだのは、20代のはじめ、文化人類学者になりたいと思っていたころでした。そのころ原題はまったく知らず、ソバージュとは、私にとって長い間「パーマをもじゃもじゃにしたヘアスタイル」の意味しかありませんでした。美容師だった姉の実験材料としてモジャモジャの頭にされ「これ、ソバージュっていうヘアスタイル、最新流行」と言われたんですが、「こんなんじゃ、学校にも行けない」と泣きました。

 文化人類学者はとうにあきらめ、中学校の国語教師になって、三色スミレを英語でPansyパンジーというのは、フランス語でPensee(思慮、思案、思考)から名付けられたと知りました。花咲くころ、花の頭を下に向けて思案しているような風情だからだそうです。「思案、思考」というフランス語由来のために、パンジーは「自由思想」のシンボルに用いられました。

 けれど、ソバージュはやっぱり「もじゃもじゃ頭」以外の意味は知りませんでした。
 30代になって娘が生まれて、近所の大学に再入学し、語学を以前よりはきっちり勉強するようになって、ようやくフランス語のソバージュは「野原の」「野生の」「原野の」という意味があることを知りました。フランス語は修飾語が被修飾語のうしろにくるので、「野生の思考」は「パンセ ソバージュ」となります。
 レヴィストロースは、フランス語でいう「野生の思考」という意味と「野のスミレ」という意味の掛詞として、未開社会の神話的な思考法を述べた著作に「La pensee sauvage」というタイトルをつけたのです。原著本の表紙は、三色スミレの絵を装丁しており、日本語版のみすず書房の装丁も、この原著の三色スミレの絵を用いています。

 『野生の思考』は「野のスミレ」でもあること、もとのフランス語は「ラ パンセ ソバージュLa pensee sauvage」であることを知って、もじゃもじゃソバージュ頭と「野生」が結びついたときは、「へぇ」ボタンを10回くらいたたきました。美容界で、アフリカ人のアフロヘアをアレンジした「野性的なヘア」が「ソバージュ」と名付けられたということでした。
 そんなわけで、引っ越してきたgooブログでは、「カフェらパンセソバージュ」をブログタイトルにいたしました。

 スミレというのは、私が子どもの頃、密かに自分の換え名にしていた呼び名です。本名はとてもダサくてかわいらしくないと子供心に感じて、でも「スミレ」ならかわいらしい、と思ったのでしょう。
 万葉集の山部赤人の句、「春の野のすみれ摘みにと こしわれそ 野を懐かしみ一夜寝にける」という和歌を知ったのは高校生のころ。
 1991年にタカラヅカスターのひとりに「春野寿美礼」という名がついたのも、この赤人の歌からの名付けだそうです。

 いよいよ春。スミレも咲き出します。
 ♪春は名のみの風の寒さや~、♪春よこい早くこい、歩きはじめの~ ♪春が来たはるがきたどこにきた~ ♪どこかで春が生まれてる~ ♪春のうららのすみだ川~ ♪春の日の花と輝くうるわしき姿に~ ♪春の小川はさらさら流る~
 いくらでも出てくる春の歌。山ほどある春の歌の中、今日の歌は、「ラララ赤い花束の唄」。
 正式名称は「春の唄」らしいけれど、「春の唄」じゃ、いったいどの「春のうた」なんだかよくわからないから、「赤い花束車につんでの唄」ってことで。
http://www.youtube.com/watch?v=RuEr7UU6kyw&feature=related
作詞:喜志邦三 作曲:内田 元

♪ラララ 赤い花束 車に積んで 春が来た来た 丘から町へ
 菫(すみれ)買いましょ あの花売りの 可愛い瞳に 春の夢

♪ラララ 青い野菜も 市場について 春が来た来た 村から町へ
 朝の買物 あの新妻の 籠にあふれた 春の色

♪ラララ 啼けよチロチロ 巣立ちの鳥よ 春が来た来た 森から町へ
 姉と妹の あの小鳥屋の 店のさきにも 春の唄

♪ラララ 空はうららか そよそよ風に 春が来た来た 町から町へ
 ビルの窓々 みな開かれて 若い心に 春が来た

<つづく>
コメント (6)
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