春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「旧新橋停車場歴史展示室 蒸気機関車」

2024-06-13 00:00:01 | エッセイ、コラム


20240613
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2024に十四節季日記(2)旧新橋停車場歴史展示室 蒸気機関車

 パナソニック汐留美術館に来た時は、隣に建つ新橋停車場博物館も見ていくことが多いです。無料なので。
 復元された近代日本最初の駅のたたずまいも好きだし、展示ごとにさまざまな鉄道の写真やビデオを楽しむことができます。前回訪れたときは、鉄道で働く人々の制服展示でした。今回は「蒸気機関車から電気機関車へ」という機関車特集。蒸気機関車から電気機関車の変遷などの写真展示と、精密な電気機関車模型がありました。

 旧新橋停車場博物館の口上
 1872(明治5)年10月14日に新橋~横浜間に日本初の鉄道が開業して以来、日本の鉄道は長きにわたり、機関車が客車や貨車をけん引する輸送形態が主流でした。本展では、国鉄の電気機関車やディーゼル機関車を中心に、貴重な写真や模型などの関連資料とともにその歴史と活躍をふり返ります。

 「乗り鉄」趣味だった私。青春18切符で一日乗りっぱなし乗車とか、130円初乗り切符で大回り一日乗車とか、電車に乗っているだけの旅を楽しみましたが、コロナ以後はさっぱり電車に乗っているだけの旅もしなくなりました。そろそろ復活したい。
 130円おおまわり乗車日記
https://blog.goo.ne.jp/hal-niwa/e/7f86614e9e690e8f808035463142ec95
 
 私は、蒸気機関車が行き来する吾妻線(当時は長野原線)のわきに建つ家で育ちました。子供のころは、蒸気機関車の始発が線路を通っていく音で目を覚ましました。
 母の弟が国鉄職員だったので、叔父一家といっしょに毎年日本海の鯨波へ海水浴に出かけるのが、夏休みの恒例でした。行きかえり蒸気機関車に乗り、三国峠の清水トンネルで慌てて窓を閉めたのもなつかしい思い出です。まだ暗い3時に起きて駅へ向かい、始発に乗り6時間以上乗車。最初の2時間くらい半分うとうと。三国峠を越えると、群馬とは違う新潟の風景になるので、広い田んぼをひたすら眺めてすごしました。日本海の鯨波には10時ころ着きました。海の家に泊まり翌日午後また延々と列車にゆられて帰宅しました。私が列車に延々と揺られているのが好きなのは、このころの思い出が刷り込まれているからでしょう。

 高校生のころ、蒸気機関車の最後の運行がありました。吾妻線は1967(昭和42)に渋川- 長野原駅間が電化されました。SL最終運行は6月10日。 最後のSLはC11。花で飾られたC11の姿が新聞に載ったのを覚えています。
  現在は高崎水上間を観光用SLが不定期運行しています。

 産業革命後、さまざまな機械が人間の生活に入り込みました。自動織機も自動車も飛行機も月へ行くロケットも、人間の生活を豊かにしてきたと思います。その中で、私が一番好きな「人間が作り出した機械」は、蒸気機関車です。
 蒸気機関車は、私にとって「労働者の仲間の働く機械」です。たぶん、教科書に載っていた中野重治の詩の印象が強いのだろうと思います。観光運行でなく、ふるさとを定時運行で走っていた機関車を利用した、最後の世代にあたる70代の郷愁も含まれるでしょう。機関車は、私には労働者の力強く美しい働く姿を見せてくれた存在です。
 現在は観光用の蒸気機関車も走っていて、乗ることができます。昔の通勤通学用で利用したころとは違う乗り心地でしょうが、いつか乗車してみましょう。

 5時に鉄道博物館は終了です。まだ見たいビデオも残っていましたが、4時45分にぷつんと終わりました。NHKで時々「なつかしの廃線特集」などを放映するので、見ています。儲かる大動脈以外は、全国の小さな支線はほとんど廃止されている現在、ふるさとの県内鉄道が稼働しているのがありがたい。時間とお金が十分あるなら、母の弟「駅おじさん」が駅長をしていた駅をめぐる旅もしたい。乗り鉄復活に今一歩。

<つづく>
(おまけ)
機関車 中野重治

彼は巨大な図体を持ち
黒い千貫の重量をもつ
彼の身体の各部は悉く測定されてあり
彼の導管と車輪と無数のねじとは隈なく磨かれてある
彼の動くとき
メートルの針は敏感に廻転し
彼の走るとき
軌道と枕木と一せいに振動する
シャワッ シャワッ という音を立てて彼のピストンの腕が動きはじめるとき
それが車輪をかきまわして行くとき
町と村々とをまつしぐらに駆けぬけて行くのを見るとき
おれの心臓はとどろき
おれの両眼は泪ぐむ
真鍮の文字板を掲げ
赤いラムプを下げ
常に煙をくぐって千人の生活を搬ぶもの
旗とシグナルとハンドルとによって
輝く軌道の上を全き統制のうちに驀進(ばくしん)するもの
その律儀者の大男の後姿に
おれら今あつい手をあげる

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする