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ぽかぽか春庭「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展 in 菊池寛実記念智美術館」

2024-08-17 00:00:01 | エッセイ、コラム


20240817
ぽかぽか春庭アート散歩>2024アート散歩盛夏(1)「走泥社再考 前衛陶芸が
生まれた時代」展 in 菊池寛実記念智美術館

 大倉集古館から歩いて1分もしないところにあるのですが、これまでぐるっとパスでは、割引だけでしたから、お金を払ってまでお金持ちが収集した陶磁器を見ようという気持ちになれなかった。今回、ぐるっとパス提示だけで入館できることがわかりました。私ルールでは、ぐるっとパスは最初に2500円で買ったあと、無料で入館できるところだけ訪問する。丸の内に進出した静嘉堂文庫がぐるっとパス対象館ではなくなったのは残念でしたが、対象館がふえることもある。



 今回の展示の作品、智美術館の所蔵品は少ない。さまざまな美術館から集められた走泥社のオブジェ焼き。日本の陶芸の最前線を走り続けた団体の回顧展です。司馬遼太郎が八木一夫について語っているインタビューの再放送を見たり、日美の紹介などもみましたが、私がこれまでになじみがあったのは「ザムザ氏の散歩」だけでした。他の走泥社に集った人々の作品。ぜひ走泥社の陶芸を見たいと望んで入館しました。

八木一夫「ザムザ氏の散歩」1954

 私が撮影自由の美術館で撮影した作品は、ほとんどが下手です。専門のアート写真家にくらべ下手なのは当然ですが、私は自分の思い出のために、自分の目で見たままを映したいと願って、下手の横好きをつづけています。が、このザムザ氏は、すごく上手に撮れたと思います。

 菊池寛実記念智美術館に初めて入りました。門から入って最初に目に入るのは、私の好きな古い洋館です。この日は内部は」閉鎖中。


 菊池寛実(1885 -1967年 )は、明治から昭和まで、炭坑で大きな財をなした富豪です。菊池智(とも1923-2016) は寛実の娘で、陶磁器のコレクターでした。智は、二十歳のころ、父が炭鉱に築いた登り窯によって陶磁器に興味を持ち、収集をはじめました。2003年に、寛実が残した土地にビルを建て、一階ロビーとカフェ、地下一階を展示室としました。

 洋館は1924年に建設されました。建てられてから百年目の館、見学機会があるとき、ぜひ訪問したいです。
 美術館内1階ロビーあたりから庭に出る出入り口があるかと思ったのですが、カフェからの出入り口しかなかった。恵比寿で、ビアホールランチの「ハンバーグカポナータソース&アジフライ&海老フライ大盛ライス」というのを食べておなかいっぱいだったので、カフェに入らずに出てきてしまいました。

 らせん階段の階段手摺は、ガラス作家の横山尚人(1937~)の作品。フラッシュ禁止にすれば走泥社の展示作品は撮影OKでしたが、らせん階段の撮影は禁止とのこと。よって、下の写真は、階段を撮影したものではなく、踊り場の作品「公害アレルギー」を撮影したものです。

  

 地階の走泥社のオブジェ焼きは、「前衛」を走り続けた作品がずらりと並ぶ光景、圧巻の展示でした。

 階段の踊り場に展示された、里中英人「シリーズ公害アレルギーⅠ-Ⅵ」1971
 
 オブジェはオブジェとしてだけでなく、社会に向かって作家の意図を表現していけることを示した作品「公害アレルギー」 
 でも、私、感性にぶいから、タイトル見ないうち、この作品から公害って、即座には感じられなかった。この作品に「蛇口の変容Ⅰ-Ⅵ」というタイトルがついていたら、そう思うし「アサガオ六種」と出ていたら、マットという署名が入ったオブジェ「泉」へのオマージュかパロディと思ったろう。体内の水分放出の出口が右側から歪んでいき、一番左ではついにもげてしまって穴ぽこだけ。なるほど、公害が進んで行けば、最後はもげてなくなるんだな、ってとこまで詰めないと公害の意味が伝わらないという鈍さ。

 前期展示の第一章第二章「走泥社結成から「オブジェ焼」の誕生とその展開 1963までの作品」のうち、展示されていたのは、八木のザムザ、鈴木の「ロンド」山田の「作品」の3点のみ。

後期展示
第三章「現代国際陶芸展以後の走泥社」1964-1973

八木一夫「小町のギプス」1964  八木一夫「曲」1964
   

八木一夫「黒陶 環」1967   八木一夫「白い箱」1971
   

八木一夫「頁Ⅰ」1971     


山田光「作品」1957

山田光「塔」1964    山田光「陶壁」1969
 

鈴木治「ロンド」1950    


鈴木治「フタツの箱」1964    鈴木治「泥像」1965
 
鈴木治「縞の立像」1971  鈴木治「馬」1972 鈴木治「上を向く馬」1975
  
   
 熊倉順吉「困却」1965     熊倉順吉「風人’67」1967
  

林康夫「ホットケーキ」1971  
 ホットケーキに最初にナイフをいれたところ、という解説でしたが、私の印象では「われめ」。すごいエロチックなエネルギーを放出している感じがしました。作品をどう受け取るかは、見る人の勝手。

川上力三「荒法師」1964   川上力三「偽証」1966
   

林秀行「三つの形」1970   林秀行「作品」1973
 
 展示脇の解説プレートによると、林秀行「作品」は、三つのポットが男。ポットから注がれる器(穴?)が女であるとのこと。左右にあるのは卵管か。第二回日本陶芸展前衛の部で、文部大臣賞を受賞した作品です。この文部省方針でいけば、少子化も今ほどひどくなかったかもしれないのに、「少子化を正すには一夫多妻がよい」なんて言い出す輩がいるから、この先もあやうい。

益田芳徳「沈黙」1974


現代国際陶芸展より
ケネス・スターバート「花生」1963 ピーター・ヴォ―コス「陶彫」1963 ルーシー・リ「大鉢」1963  
 

 一部作品の入れ替えがある展示方法は他の館でも取られている方法ですが、前期と後期でがらりと入れ替えがあるとは思っていなかったので、前期作品を見ることができなかったのが残念でした。
 ポスターなどの表示に「前期は1963年までの走泥社作品を展示」「後期は1963以後」と、別々の展示であることをはっきり示しておいてほしかったです。

 走泥社、前衛陶磁器の最前線を走り続けたエネルギーに圧倒されました。

<つづく>
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