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ぽかぽか春庭「光の春ことば集めあそび 春隣の御所車」

2025-02-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20250206
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>光の春ことば集めあそび(1)春隣の御所車

 11年前の春庭コラム再録です。
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20140201
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>早春賦-春の言葉集め(1)春隣の御所車

 立春とは、太陽黄経が315度になったとき、と説かれてもよくわからないけれど、日が一番短かった冬至から約45日、一ヶ月半と言われると、わかりやすい。ああそのころには、ちょっとは日脚が伸びてきたなあ、と実感できるので。
 2014年は2月4日。立春前の、少しは春が近づいた実感がするひとときが春隣。春隣は冬の季語になるのですが、まだだ寒いけれど、もう春は目の前、少しずつ近づいてくる春を待つここちがします。

 寒くても「叱られて目をつぶる猫春隣(万太郎)」なんてつぶやいてみるだけで、ちょっとは春の気配もしてくる気がする。
 春のことばを集めて口ずさんでいると、それだけで少しは暖かくなってくる気がするので、春めくことばを集めてみたり、春隣の気分はもう春。でもないですが、言葉を集める遊びをしてみます。類語あつめ、という分野のクイズで遊びましょう。

 クイズです。次のことばはどんな「ことばの仲間集め」をしたものでしょうか。
 Aの3語でわかったら50点。Bの3語でわかったら30点。Cの3語までで10点。
A: 菊 笹 御所車  B: 菱 四目結 柏  C: 藤 牡丹 扇  

 女優じゃないほうの前田 愛(まえだあい1931-1987 国文学者・文芸評論家。本名はまえだよしみ)は、上のことばの並べ方について、著書のなかで「分類学からいうと、珍妙なめちゃくちゃな配列である」と言っているのですが、へぇ、近代文学の泰斗、碩学と言われた物知りの前田先生にも、わからないことがあったんだ、と、思ったことでした。
 うふふ、前田先生が零点だったと思うといい気分。春庭は、Aでわかったので50点!

 前田愛は、『商売往来刊誤』をデータバンクの一覧、と紹介して、この本の事物の並べ方について述べています。そして、「菊、笹とふたつ植物名が並んで、次に御所車が出てくるのが、わけがわからない。そのあとに出てくる菱と柏,藤はまた植物名だけれど、なにゆえ突然「四目結」というのが、その間に挟み込まええいるのか、理解に苦しむ。分類学からいうと、めちゃくちゃなのである。いや、そもそも分類という思想が完全に欠落しているのではないか、とおもわれるほど、この配列は珍妙である。」(前田愛・加藤秀俊『明治メディア考『2008河出書房新社)
と、これらのことばの並べ方を「めちゃくちゃ」と断じています。

 でも、着物好きな女性ならすぐにピンときたことでしょう。着物は持っていないけれど、染物織物を見て歩くのが趣味の春庭も、Aで気づきました。
 この『商売往来刊誤』のことばの並べ方、前田愛が「植物名の分類法としては、めちゃくちゃ」と言っているけれど、植物名を分類して並べたのではありません。
 「日本伝来の文様の名前」が並べられているのです。着物や手ぬぐいなど、染物などに用いる代表的な文様が、菊 笹 御所車 菱 四目結 柏 藤、なのであり、分類の方法としては、実によくまとまった語が並んでいるのです。

 南方熊楠以来の碩学と謳われた前田先生にも不得意の分野があったのだと思うと、あれもこれも知らぬ事だらけの春庭も、ちょっとは安心します。年齢だけは前田先生がなくなった56歳をとっくに過ぎてしまったのに、な~んもまとまった知識がない春庭だけれど、少なくとも、染物織物の伝統文様という分野に関しては、春庭の雑学もちょっとは役にたちます。
 菊 笹 御所車 菱 四目結 柏 藤 牡丹 扇  
は、植物分類を表しているのではなくて、文様を表している「言葉集め」なのです。

 今日の言葉集め
千鳥 波 青海波 流水 雲 霞 麻の葉 亀甲 七宝 籠目 矢絣 鹿の子 市松 沢瀉 唐草 竹 松 梅 桜 瓢箪 虫   

今日の一冊:『日本の伝統文様』CD-ROM素材250(2007エムディーエヌコーポレーションズ)
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<つづく>
コメント
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