春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「ランチ&ハンドクラフト」

2013-05-09 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/05/09
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>無料ですごすゴールデンウィーク2013(5)ランチ&ハンドクラフト

 ゴールデンウイーク最後の日、わが家は「プチおでかけ」で、池袋へ出かけました。娘息子とランチ、そして手作り工芸の一日を楽しみました。

 ランチは、駅前のマルグリットというフレンチの店。娘と息子は、フォアグラランチコース。前菜、フォアグラ、メイン、デザート、紅茶。私は「前菜盛り合わせ、メインの魚と肉、デザート コーヒー」というコースです。 
前菜  

赤魚ソテー、クリームソース(アンディーブとグレープフルーツ)茹で菜の花添え


牛ほほ肉の赤ワイン煮
マッシュポテト&タラの芽のてんぷら添え

娘とむすこが食べたフォアグラ
 娘の評「とてもおいしいけれど、もっとでかいのが食べたい」

娘のメイン鴨のコンフィ

デザート盛り合わせ
バニラアイス、苺ムース、チーズケーキ、チョコケーキ

 庶民的なフレンチランチ、おいしかったし、ギャルソンも感じよかったです。

 娘は、東急ハンズの「ゴールデンウイークのハンドクラフト特集」に申し込み、「手作りバッグ」を作りました。

 昨年の母の日に娘が作った「帆布に皮の持ち手をつけたバッグ」をもらいました。姑に「これ、手作りバッグなんですよ」と見せたら、姑は自分がプレゼントされた「友禅染のハンカチ」はそっちのけで、「あら~、このバッグいいわねぇ」とバッグにご執心だったのです。「友禅染のハンカチ」も娘の手作り品なのですが、姑が言うには、「こんなきれいなハンカチじゃ、手を拭いたりするのももったいなくて、しまっておくことになるから、実用的な品のほうがいい」

 娘は、「買えるものなら、同じバッグを買ってプレゼントできるけれど、これは東急ハンズ手作りイベントで作ったものだから、来年のイベントまで待たないと」と言って、1年間待っていました。今年のゴールデンウイーク手作りイベントの応募はインターネット申し込みになり、朝から応募が殺到して「接続不能」の状態が続きました。娘は接続できるまであきらめずにクリックし続け、ようやく「手作り予約」ができました。
 午後3時から5時すぎまで、一生懸命作ったバッグ、欲しがっていた姑が喜んでくれると思います。

 私と息子は、サンシャイン通りのブッグオフの2割引きセールで古本を買ったあと、東急ハンズの手作りコーナーで「皮クラフトで動物を作る」というのに挑戦しました。
 革細工というのをはじめてやってみました。皮を水で湿らせてから筋をつけたり膨らませたりしてちょっとずつ形をととのえました。小さい子どもにも作れる簡単なクラフトでしたが、楽しかったです。

パンダと象

<おわり>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「みどりの日自転車散歩」

2013-05-08 00:00:01 | エッセイ、コラム

旧古河邸のバラ

2013/05/08
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>無料ですごすゴールデンウイーク2013(4)みどりの日自転車散歩

 みどりの日は、恒例の「無料で庭園・公園めぐり」です。この日都立公園は、無料になります。
 普段、有料であっても、150円とか250円という入場料金で、家計圧迫するというほどの値段ではないのですが、なにしろ無料が大好きなので、毎年この日は自転車で都内を駈け巡り、無料のお庭でしばし休憩。

 2013年のみどりの日も、旧古河庭園、六義園、小石川植物園をめぐりました。
 交通費も無料の自転車散歩ですが、東京を走るには、ひとつ問題があります。東京は河岸段丘によってできた台地と低地が複雑に入り組んだ地形をしているので、とにかく坂が多い。上り坂を自転車を押して上がる体力がなくなったら、このみどりの日散歩もできなくなるのか。そのころ、アシスト電動自転車が今よりぐんとお安くなっていることを期待します。

 そして、私の希望は、自転車を漕ぐことによって発電し、その電力を蓄電して上り坂などをアシストする自己発電電動自転車を開発してほしいってこと。自転車のライトは自転車が走ることによって電気がつく仕掛けですが、それをもっと発達させることができるんじゃないかしら。

 スポーツジムなどで、据え置きの自転車こいでいたり、腕を両脇から寄せる運動をしているのを見るたびに、そのエネルギーを無駄に発散させずに、発電したらいいのに、とシロート考えで思うのです。靴に簡単な発電機をつけて、歩く一歩ごとに発電するとか。
 渋谷の交差点で大勢の人が歩いているのを見ても、あの歩道の下に発電できる何かを敷いておいて、人が踏みしめるたびに発電したら、信号や街灯の電気くらいまかなえるんじゃないかと思います。火力や原子力にたよらない社会のために、さまざまな方法で発電できるようにしていきたい。

 てなこと空想しながら自転車を漕いで、最初に入ったのは旧古河庭園。この庭園も、3番目に入った小石川植物園も、東京の台地と低地を組み合わせた庭園、植物園です。
 五月の連休中、旧古河庭園はいつも薔薇見物で賑わいます。薔薇庭園としては、調布の神代植物園の薔薇園のほうが大規模ですが、古河庭園は、なんといってもコンドル設計の旧古河邸が、背後にどんと控えているので、薔薇も一段とゴージャスに見えます。
 ただ今年は、どこの植物園や庭園でも、薔薇も藤も例年より10日以上早く盛りとなったので、連休中は見頃を過ぎてしまっていたのが残念。古河庭園の薔薇、いくつかはきれいな花をつけていました。
 
 
 六義園も、ツツジは盛りを過ぎていました。ツツジの花見にはちょっと残念な園内でしたが、女性二人の芸人さんが江戸太神楽の大道芸をやっていたので見物。コマの綱渡りや唐傘の上にボールや茶碗、枡などを回す伝統芸を披露していました。

 白山通りを千石方面へ向かう途中、ビストロスクアールという洋食屋でサービスランチ千円。黒鯛とわかめの炊き合わせとビーフ煮込みと温野菜のワンプレート盛り合わせとパン。

 小石川植物園に到着したのは午後3時。4時半閉園まで90分の散歩です。こちらのツツジもほとんどが終わり。遅咲きの平戸ツツジ八重大紫がまだ咲いていました。


 でも、ハンカチの木はまあまあ見られたし、インドで筆記媒体として使われた多羅葉のはっぱ。その花も見ることができました。

ハンカチの木

多羅葉の花

 タラヨウの葉への落書き。紙が発明される前、この葉に文字を書いていた古い歴史があることを知っていたのやら知らないでただ落書きしたのやら。
  

 ツツジ以外でも、さまざまな花が花盛り。

  
たにうつぎ 

檜扇アヤメ  

セイシカ(聖紫花)


アメリカヒトツバタゴ

 高台の茶店でみたらし団子と柏餅を買って、ベンチを探しながらぷらぷらと。どのベンチも今日は二人連れや家族連れがいっぱい。大地の下に広がる日本庭園へ降りました。 日本で最初の医科大学の建物、「東京大学小石川博物館」の建物前のつつじの脇に座るのがお気に入りのスポットなのですが、こちらも本日は3組のカップルが寝そべってお昼寝中。池の前のベンチでお団子と柏餅を食べました。
 日が傾いて園内すいてきたので、さきほどのお気に入りスポットの場所があき、セルフタイマーで一枚ぱちり。



 今日もこころ楽しく一日をすごすことができました。ランチ千円とお団子300円合計1300円の行楽費。
 半分の750円の貯金箱に入れておいて、お金が貯まったら、のちほど「東北の産物を買う費用」にします。今、一家でクドカンの「あまちゃん」を録画して見ているので、三陸海岸のウニ丼食べたい。

<つづく>
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「映画・桃さんのしあわせ」

2013-05-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/05/07
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>無料ですごすゴールデンウイーク2013(4)映画 桃さんの幸せ」

 「桃(タオ)さんのしあわせ 原題:桃姐」は、映画プロデューサーのロジャー・リー(李恩霖)と彼の家で長年働いた家政婦の話を元にした映画です。香港の女性監督アン・ホイ(許鞍華 1947年、遼寧省で中国人の父と日本人の母の間に生まれる)。英語版のタイトルは「A Simple Life」 
 2012年の第4回沖縄国際映画祭で、ゴールデンシーサー賞(金石獅子賞)を受賞しました。また桃さん役のディニー・イップ(葉徳嫻)は、ヴェネツィア国際映画祭で主演女優賞を受賞しています。ロジャー役はアンディ・ラウ(劉華)。以下、ネタバレ紹介です。

 香港の富裕層だったリャン家で13歳から60年以上も働き続けた鐘春桃は、桃姐(タオジェ=タオねぇさん)と呼ばれ、一家の家事育児を支えてきました。
 この香港の昔ながらの「家政婦」というのは、日本の「お手伝いさん」とか「ヘルパーさん」とはちょっと立ち位置が違います。インドでアーヤと呼ばれるのも似たようなものですが、乳母と家事責任者をいっしょにしたような存在です。英語でいうhousekeeping matron(家政婦長)とNurse(乳母)を合わせたようなもの。

 富裕層の女主人は、家庭の中で「家政の指揮をとる責任者」の立場であり、家の中で家事や育児は雇い人にさせます。桃さんも、リャン家の子どもたちを育て、料理をし、家事全般を仕切ってきました。子どもたちにとって育ての母ともいうべき存在なのです。

 香港の富裕層は、英国統治が終了する前後、相次いで財産を世界のあちこちに移転し、一家一族で移住を果たしました。人民中国の香港に残った富裕層香港人はそう多くありませんでした。リャン家もアメリカなどに移住し、香港を根城にしているのは、北京と往復しながら映画を製作しているロジャーだけ。
 桃さんは、一番かわいがって育てたロジャーが香港に帰るのを楽しみにしながら毎日すごしてきました。ロジャーにとって、桃さんは赤ん坊の時からいっしょにいる空気みたいな存在。

 ある日、桃さんは脳卒中で倒れます。70歳を過ぎている桃さんですから、いつかはこういう日も来ることはわかっていたのですが、ロジャーはようやく桃さんがかけがえのない人であることに気付き、最後まで寄り添おうと決意します。

 桃さんは日中戦争で身寄りを失った孤児。13歳のときにリャン家に奉公に来て以来、リャン家の使用人としての分を守って暮らしてきました。富裕なリャン家は、桃さんを家族のように一家の祝い事にも招きます。しかし、桃さんは、ロジャーの母がお金を与えようとするのも遠慮する人です。今まで働いた分のお給金はきちんともらってきたので、それ以上のお金をもらうのは勤労者としてのプライドが許さない。

 体の自由がきかず、家政婦として働けないなら、自分の貯金の範囲で入れる介護施設で暮らしたい」と桃さんは決めます。
 ロジャーは、自分にとって、育ててくれた桃さんが実母以上に大切な存在であったことに気付きます。実母は、サンフランシスコに移住して何不自由ない生活をおくっていますし、大勢の家族親がついています。身よりのない桃姐と、彼女に世話になりっぱなしできたロジャーとの新たな日々がはじまりました。

 ロジャーは桃さんが自分で支払える範囲の施設を探し、映画の仕事の合間に香港に戻っては桃さんを見舞います。施設には、身寄りがない老人、身寄りがあっても寄りつかない孤独な老人も多い。そんな中、桃さんはロジャーが来てくれることに誇りと喜びを感じながら晩年を過ごします。施設の職員や入居者たちも、凛として生きる桃さんの人柄を慕うようになります。

 ある日、ロジャーが製作した新作映画プレミアム上映が香港で行われました。ロジャーは桃さんを招待し、知り合いには「義理の母です」と紹介します。赤ん坊のころからロジャーを育ててきた桃さんにとって、ロジャーが映画人として成功したことを喜ぶ以上に「母」と呼ばれたことをうれしく思うのでした。
 このプレミアム上映シーンでは、香港映画ファンにとってはすごいお祭り騒ぎ的配役みたいですが、香港カンフーなどほとんど見なかった私には、誰がだれやら、、、、

 映画は桃さんの晩年を淡々と描き、特別劇的な事件も起こりません。ごく普通の日常、静かな晩年。シンプルそのものの人生でした。
 しかし、ロジャーと桃さんの間の、こまやかな交流のシーン、いっしょに散歩したり、一族の祝い事の集まりでいっしょに写真をとったりのようすに、桃さんのしあわせな気持ちがしみじみ伝わります。
 リャン家で働き続けた桃さんの人生は、ささやかな一生だったかもしれないけれど、十分に報われた一生だったと、映画は描きます。

 年老いた親を子が世話するのが当たり前とされてきたアジアで、もはやそれが出来ない社会になっているのが現実です。「桃さんのしあわせ」は、変化し続けるアジア社会で、年老いたときに、大切にしてきた人との絆を失わずに生きて行ける幸福を描いているのだと思うのですが、私には、介護施設の中で、10年以上も誰も面会に来る人もなく過ごしているという老女のほうに気をとられました。日本の老人ホームでも、子がいても、誰も面会にこないという老人が数多くいる、という現実を、ヘルパーさんをしている知人からも聞いているのです。

 桃さんのお葬式の場面で老人が朗々と詩を暗唱します。中国のお葬式の標準式次第なのかどうか分かりませんけれど、中国では昔ながらの教育を受けた老インテリはたいてい李白でも杜甫でも詩を暗唱できるのです。20年前に中国に赴任していたとき、大学の運動会でも詩の暗唱合戦みたいなことをやっていました。今はどうかわかりませんが。

「無題」李商隠(拙訳:春庭)
相見時難別亦難 人との出会いは難しいものですが、別れはさらに難しい
東風無力百花残 春の風は力なく、花々もしおれてしまいました
春蚕到死絲方盡 春の蚕は糸を吐き尽くして死に
蝋炬成灰涙始乾 蝋燭のすべてが灰になってからようやく涙が乾きます
曉鏡但愁雲鬢改 暁に鏡を見て髪が変わってしまったのをを愁い
夜吟應覚月光寒 夜更けに詩を吟ずれば月光の冷たさを覚えます
蓬山此去無多路 蓬山はここから遠くはありません
青鳥殷勤為探看 青い鳥よ(今は会えない恋人を)心尽くして探してきてほしい 

 なかなか会えない恋人を思って嘆く詩を、永遠の別れの時に吟じるおじいさん。タオさんを心ひそかに慕っていたのでしょうか。
 「使用人と雇い主」という関係ではなく、「義理の母と義理の息子」となって過ごした晩年の数年間は、桃さんにとって「心をこめて探す恋人」との蜜月のようだったかもしれません。

 人生の黄昏時に、ときどき会って笑顔を交わしあえる相手がいるという幸運を、私も持っていられるかどうかわかりませんが、桃さんのような穏やかな笑顔で最後の日々をすごせるよう願っています。

<つづく>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「映画 別離」

2013-05-05 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/05/05
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>無料ですごすゴールデンウイーク2013(3)映画「別離」

 無料ですごすゴールデンウイーク。
 無料の本を図書館で借りることもよい過ごし方だとは思うのですが、私の場合少々問題が、、、、
 娘に叱られました。「母に図書館から電話がありました。母は、先週、本を借りて文化センターに置き忘れてきましたね。文化センターの人が中央図書館にその本を持って行ってくれて、母が借りたって分かったので、図書館から連絡がきたんです。母はね、何でもいろんな所でなくす人なんだから、もう図書館で借りちゃだめ。自分の本落とすならしかたないけれど、人様に借りたものをなくすなんて、最悪でしょう。ちゃんと責任持って返せる人でなければ、図書館の本借りちゃだめです」

 ショボン。あれま、図書館で借りたはずの本が見当たらないから、どこかに潜っているのだろうと思ったのだけれど、文化センターでジャズダンス練習したとき忘れて来ちゃったんだ。ほんとに、私はいろんなものをいろんな場所に置き忘れるのです。本も鍵もめがねも時計も。だから、もうこれからは、図書館の本を借りない方がいい。ゴールデンウイーク、図書館禁止。

 2日の仕事帰り。明日は休みと思うとちょっとのんびりしたいけれど、図書館禁止だし、久しぶりに映画を見ることにしました。夫が役にたつのは、映画館パスポートを貸してくれるときだけですから、たまには利用しないと、存在価値がなくなります。
 イラン映画『別離』と中国香港合作『タオさんの幸せ』を見ました。飯田橋ギンレイはひとりの監督の2作品とか、ある女優の2作品などの2本立てなどで組み合わせますが、今回は、ストーリーを運ぶキーワードのひとつが「介護めぐる人間模様」が共通する2作品です。

 まず、「別離」を紹介します。『別離』は、2012年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した直後に日本でもロードショウ公開されました。私は、本は文庫が百円古本になってから買うし、映画はロードショウ公開から数年してギンレイにかかってから、あるいはテレビ放映されてから見るので、紹介といっても、もう皆見ているかも知れませんけれど。

 『別離』は、第61回ベルリン国際映画祭で、金熊賞(最高賞)と銀熊賞(男優賞・女優賞)を受賞し、第69回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞受賞、第84回アカデミー賞で外国語映画賞受賞というイラン映画です。
 とても見応えのある映画で、ラストシーンまでそれぞれの登場人物の演技もすばらしかった。

 女の子を持つ2組の夫婦が登場します。女子中学生テルメーの進学問題に心を砕くのは、銀行で働いているナデルと英語教師シミン。シミンはテルメーのよりよい教育環境を得るために、長い間奔走して外国移住の許可証を手に入れました。イランの上流階級の人々は、高度な教育を受けさせるため、子女を留学させます。その費用が出せない中産階級の場合、一家で移住することが手段のひとつです。

 しかし、ナデルは父親がアルツハイマーを患っているので、「一家で移住はできない」と思い、移住には反対です。
 親族が老人の介護をすることがイスラムの教えに忠実な方法と考えられているイランでは、介護施設に親を入れるなど、親不孝の最たる者と見なされてしまいます。英語教師の仕事をこなしつつ舅の介護を続けてきたシミンには、もう心身に限界が来ているぎりぎりの選択だったのでしょう。

 シミンは家庭裁判所に離婚を申し立てて、実家に帰ってしまいます。シミンから見ると、夫が妻よりも父親を選んだと思われるのです。
 妻が出て行ったために、ナデルは知り合いのつてで、家事介護を頼むヘルパーを雇います。4歳の娘ソマイェを連れている貧しいラジエーです。中産階級のナデルにとって、銀行員の給与の中からヘルパー代を出すのはたいへんな出費です。

 シミンはスカーフを巻くだけの「軽装」ですが、ラジエーは、黒いチャドルを着て頭から足まですっぽり蔽っています。ラジエーは、粗相をしたナデルの父を着替えさせるにも、夫以外の男性の裸を見ることが罪になるかどうか、聖職者に電話で問い合わせるほどの敬虔な信者です。

 ラジエーは、失業中の夫ホッジャトにないしょでヘルパーの仕事を始めました。イスラム法では「夫は妻を養うべし、妻は夫に従うべし」が大切な掟です。失業した夫に代わって働くというのは、ラジエーにとって教えに反する恐ろしい行為です。それでも、娘を飢えさせるわけにはいかず、ヘルパーとして働くことにしたラジエー。ラジエーにはもうひとつ秘密がありました。

 ある日、ラジエーは、勝手に外に出ようとするナデルの父親をベッドにしばりつけて、ヘルパーの仕事を中断して外出しました。帰宅したナデルはベッドから落ちている父親を見て激怒し、仕事に戻ったラジエーをドアから押し出します。弱っていたラジエーは階段にうずくまり、近所の人の通報で病院に運ばれます。ラジエーは流産してしまいました。

 ラジエーの夫はナデルのしたことに激怒し、裁判が始まります。イスラム法では、受胎後4ヶ月後の胎児は人として扱われるために、ナデルは殺人罪で告訴されたのです。
 本当にラジエーを押し出したことが原因で流産に至ったのか、ナデルはラジエーの妊娠を知っていたのか、をめぐって証人が呼ばれます。
 
 信仰する宗教,家族の問題、イラン社会の格差、さまざまな問題がからみあって、真実の追究と家族を思う心が錯綜します。なぜラジエーは、仕事の途中で外出する必要があったのか、なぜその真実を隠そうとしていたのか。

 ナデルとシミンの娘テルメーは、よりよい進学先のためにひたすら勉学する中学生でした。父親と母親の対立、ラジエーの幼い娘と交流するうち、今までは関心の外にあった貧しい層の問題やイランが抱える問題について理解していきます。多くのことがらが、家族の間で解決出来ることだけではないことも知っていきます。大人たちには保身のための嘘や偽りもあること、イラン社会に大きな問題があることも知っていきます。

 テルメーはとても知的な顔をした中学生です。テルメーを演じたのは、監督アスガル・ファルハーディーの娘のサリナ・ファルハーディーです。テルメーが理解していく事柄を、今までイランの現実を多くは知らなかった私も知りました。イランにおける介護問題とか考えたこともなかった。強い家族の絆があるイスラム社会であっても、親の介護に問題を抱える人もいるということすら想像したこともなかった。現代化した都市社会では、テヘランであろうと東京であろうと香港であろうと同じ問題があるのですね。

  貧困や格差や男女の問題、介護の問題、イラン社会の現実、イランだけの問題ではなく、世界中のさまざまな地域で人々を切り裂く刃となっています。これらのことがらに目を背けて「わが家だけの幸福」は成り立たないのだろうと思います。
 世の価値観が「お金があれば幸福」「何でも買えることがしあわせ」というものから転換しない限り、この社会の溝はどんどん深くなっていく気がします。

 世界中に、贅沢し放題の子どももいるでしょうし、ソマイェのように、失業した親のもとで、貧困にさらされながら育つ子も多いことでしょう。テルメーのように、勉強することが身を立てる最大の手段となる階層の子として、日夜勉強に励む子もいるでしょう。
 子どもの日、世界中のこどもを思います。みんなしあわせに育ってほしい。豊かな心の子ども時代をすごし、豊かな心の大人に成長して欲しい。

<つづく>
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「プレスリーのフィーバー」

2013-05-04 00:00:01 | エッセイ、コラム

レジェンド・オブ・マイ・リビングルーム

2013/05/04
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>無料ですごすゴールデンウイーク2013年(1)プレスリーのフィーバー!

 今年もまた、お金をつかわないでゴールデンウイークをすごしています。毎年のことなので、ことさら断ることもないのですが。

 4月27日、午前中は録画しておいた映画を見てすごし、午後は商店街のお祭りに行きました。「馬鹿まつり」っていうネーミングが、ばかっぽくて好きです。
 公園のフリマをひとまわり見て、最近は素人のお店やさんごっこではなく、業者のバチモン市になっていることを確認してから駅前の会館へ。

 ミサイルママたちのAダンスィングが、午後13時15分からジャズダンスを発表しました。司会舎が、出演前に出演者紹介をします。「1982年から続いているダンスグループです」
 もう30年以上ジャズダンスレッスンを受けている人たちですから、皆とても上手です。

 30代で結成したグループが上手に年を重ねて、みな60代になっているのですが、踊っている姿は30代からの変わらぬ若さを保っていて、これは実際に踊っているようすを見た人でなければ、信じられないかもしれません。長年、主婦をやり、子育てをし、親の介護を続けてきたごく普通のオバサンたちなのに、「60代の日本人女性」という響きが持つ、一般的な「オバサン像」とは、かけ離れています。
 名倉加代子ジャズダンススタジオの人たち、2011年に名倉加代子70歳のときテレビ出演したとき、いっしょに63歳のお弟子さんが踊っていました。Aダンスィングの人たちも、同じくらいじょうずで、若々しいダンスです。ただ、プロダンサーではない、というだけ。

 私も水曜日午後だけ出講して午前中に仕事を入れていなかったときには、このグループに参加していました。しかし現在水曜日は、午前中は日本語学「現代日本語概論」というのをやって、電車とバスで移動90分。電車の中でサンドイッチほうばり、午後は別の大学で日本語教育学2コマという綱渡りをしているので、水曜日のダンスレッスンは、夏休み春休みだけの参加です。

 私は、金曜日夜のダンスグループで練習を続けています。ミサイルママは、水曜日午前中と金曜日夜の週2回レッスンしています。
 私は、金曜日の練習も休んでばかりいるし、お腹の脂肪が邪魔して体が動かなくなっているので、40年踊り続けているといっても、いまだにへたっぴいですが、Aダンスィングの踊りは、みな上手で、ほんとうに見応えがありました。

 発表曲目、1曲目、マイケルジャクソンの「君が僕を感じさせるやり方The way you make me feel」。20年前、1993年に私がこのグループの一員として踊ったときと、だいぶ振り付けが変わっていました。

 2曲目は、しなやかに美しく薄布をなびかせる振り付けの、「リビングルームの伝説Legend in my living room」
 3曲目はブレスリーの「フィーバーFever」、とてもカッコいいダンスです。1970年の音源でプレスリーの歌声を聞いて下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=G9Ht1q9psfY
 
 4曲目の美空ひばり歌唱の「ペーパームーン」は、私も一昨年2011年に発表会で踊った曲です。水曜日午前中のグループと金曜日夜のグループ、同じ先生の指導なので、振り付けも共用です。と、言っても、結成8年目の私たちのグループに比べると、結成31年目であるAダンスィングは、ひとりひとり切れの良い動きを見せていて、すてきでした。
 ペーパームーンのラスト
舞台最前列がミサイルママ

<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぽかぽか春庭「憲法第3章」

2013-05-01 00:03:01 | エッセイ、コラム
2013/05/01
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>日本国憲法施行の日をまえに(1)憲法第3章

 毎年、5月3日に、憲法第3章を確認し、8月15日に第2章を確認し、11月3日の憲法発布の日にはその他の章を確認することにしています。
 第3章は、国民の権利と義務について書かれており、もっとも生活に身近な章です。国民にとってもっとも大切な人権。その人権について書かれているのが第何章なのか、知らない人でも首相にはなれますが、なったからには、第3章を尊重してほしいと思います。特に13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という条について、「公共の福祉」をほしいままに拡大解釈するようなことが許されてはならないよう、目を見張っていたいです。
~~~~~~~~~~
日本国憲法
第三章 国民の権利及び義務

第十条  日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
○2  華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
○3  栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第十五条  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
○4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七条  何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

第十八条  何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
○2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十五条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
○2  国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3  児童は、これを酷使してはならない。

第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
○2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十条  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第三十一条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条  何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
○2  捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第三十六条  公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条  何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条  何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。


<つづく>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする