2019.1.29(火)曇り
これは本のタイトルではない、偶然に二冊の本を読むことになったがその主人公がアイスマンだったと言うことだ。
「5000年前の男」解明された凍結ミイラの謎
コンラード・シュピンドラー著 文藝春秋社 1994年第一刷 古書
まずはこの本から紹介しよう。
1991年オーストリアとイタリアの国境近くのエッツ渓谷で上流のハウスラブヨッホ下方で氷河の中から遺体が発見された。当初は遭難者の遺体と思われたが、調べると5000年前の遺体とわかり世界的センセーショナルな話題となった。20数年前このニュースは知っていたが、特段興味も無くその後の調査結果など追求することもなかった。そして今、歩行や靴について考えをめぐらせることになり、このミイラが靴を履いていたという記事を思い出した。二足歩行を始めた人類がどうして靴を履く様になったのか、調べてみたくなった。
著者は遺体発見当初からその搬出、調査にかかわった考古学者で、遺体や遺物についても逐一調査されている。その後の調査研究も随分進んでいると考えられるが、本書はほぼ最初の調査報告と考えていいのではないか。遺体発見は1991年9月19日登山者のジーモン夫妻に発見されている。発見から搬出まで事細かに書かれていて、その部分に興味の無い者にとってはつらい読書である。
驚いたのはラインホルト・メスナーが遺体発見の3日後から登場することである。メスナーはわたしの青春時代の超人的な登攀家である。イタリアの南チロル出身の彼がこの現場に現れたとして何の不思議もないが、メスナーの名が本の中に現れたとき、きっと別人だろうと思った。しかしそれは当の本人で、記録や写真を撮ったりして、搬出や調査に貢献することとなる。
5000年前といえばヨーロッパでは新石器時代、日本では縄文中期と言うことなのだが、氷に埋もれたという条件が実に見事に人体の状態を保存し、数多くの遺物も状態良く保存されていることに驚くばかりである。氷河といえども移動の少ない岩陰に保存されていたという偶然が幸いしたと言えよう。つづく