『久我山歳時記』㊳、今年の晴明はちょうどソメイヨシノの満開と重なり、いい季節かと思ったが、意外に雨が続き、休みと花見が重なる日は1日しかなかった。桜の花はあっという間に散ってしまい、季節はすぐに移ろう。
4月19日〜5月4日は『穀雨』、晩春である。桜の花が散ると慌てて緑の若葉が咲き始め、このスピードの速さに驚かされる。
穀雨とは『春雨降って百穀を潤すと言われ、この時期に降る雨はさまざまな植物を育ててくれる恵みの雨となるのである。
桜の散ったあとの花はというと久我山周辺ではハナミズキの花、待ちかねた様にあちらこちらで花をつけ始める。109年前に日本がアメリカに桜の木を送ったお返しに貰ったのがハナミズキである。60本が送られ、今も都立園芸高校にはそのうちの一本が残されている。
白、ピンク、やや赤に近い色とさまざまだが、木全体が花に覆われることは桜と似ている。
バラもそろそろ咲き始めるが久我山でよく見るのはモッコウバラである。モッコウバラ(木香薔薇)は白やクリーム色のものが多いが、いい香りがする。かと思っていたのだが、実は黄花の一重と白花のみしか香らない。つまり、黄花の八重からは匂いは出ないのである。
モッコウバラはバラの種類としては珍しく、病気に強いし、棘もないのである。
匂いがいいのはジャスミン、花は黄色か白色。アジア・アフリカ原産で生垣によく使われている。この時期にはたくさんの蕾をつけ始め、花が咲きだすとジャスミンティーの香りに包まれる。遠くからジャスミンが花をつけているのがわかるほどである。
咲き始めたと言えばサツキとツツジ。サツキもツツジも木全体に大きな鮮やかな花を咲かせる。子供の頃にサツキの花を根本から取って裏を舐めると蜜の味がしたことを思い出す。
本来は5月に咲くからサツキのはずなのだが、このところの陽気でサツキも開花している。
野の花も百花繚乱、外来種のナガミヒナゲシのオレンジ色、タンポポの黄色、ダイコンの紫、他にも花は小さいがカラスノエンドウのピンクの花やオオイヌフグリ・ホトケノザの青など挙げるとキリがないほど色々な花が咲き始める季節である。
日本橋ではもうフジの花も咲き始めている。