『改めて日本語を考える』その47。先日、うなぎを食べに行ったのだが、そのお店の名前が『躻(うつけ) 』というお店。まずはこの漢字を見たのも初めてであるし、読み方もわからなかった。
一方で以前に『オタンチンパレオロガス』を取り上げたブログの評判が良かったのでこれに加えるべく罵倒語の続編を調べて見た。まずは『躻(うつけ) 』、国語辞典で調べてみると元の意味は『空っぽ』という意味でこれから転じて『ぼんやりした、または暗愚な人』を指すようである。
よくうつけと言えば織田信長を思い出すが、彼は決してぼんやりした人ではなく、奇矯な振る舞いをする(身分に相応しい格好をしない、父親の葬儀の際あり得ない振る舞いをする)ような意味で使われている。
これに似た言葉に『戯け(たわけ)』がある。辞書には1.ふざけた、馬鹿げた行動をする、2.愚か者、馬鹿者、また人を罵る言葉などとある。由来を調べると『田分け』から来ているというのが有望な説。
子供の人数で田畑を分けると孫の代、ひ孫の代には1人あたりの田畑の広さが狭くなり、家が衰退する、つまり馬鹿げたことのようである。また、この躻も戯けも中部地方(愛知県、岐阜県)の方言に由来するらしい。
これが関西に行くとやたらよく聞くのが『阿呆(あほ)』、国語辞典では愚かであることを指摘する罵倒語とある。さらに行動の愚かさだけでなく、学のなさなども指す。
由来は中国江南地方(現、江蘇省から浙江省あたり)の方言である『阿呆(アータイ)』が日明貿易で京都に伝わったとされる。『呆』はぼんやり、『阿』は親しみを込めた『〜ちゃん』という接頭語、つまり『おばかさん』というやや軽めの意味がある。
関西で言うアホと関東で言うバカではかなりニュアンスが異なる。吉本の芸人で『あほの坂田』と自ら称し、人気のあった坂田利夫さんも『ばかの坂田』では意味が変わってしまう。大阪で『おまえ、アホやなあ』と言われて真に受けて怒るものはいない。『あほんだら』は阿呆太郎が由来という説もあるが、シチュエーションによってまるでちがう表現となる。
さらに『阿呆』がつく言葉も多い。『阿呆らしい』『阿呆づら』『アホウドリ』『阿呆くさい』『アホ毛』『阿呆タレ』『阿呆口』など。何も親しみのある表現である。