『日本そばにこだわる』4杯目。大晦日なので年越しそばのことを書けばよいのだが、年越しそばには特に決まりはないようで、そばの種類もかけそばなのか、ざるそばなのか、また、食べる時間さえも夕食なのか、除夜の鐘が鳴り終わるまでに食べ終わるのか、などと多種多様で説は多すぎる。
ただ、よく言われている『香川県の人は年越し蕎麦でなくうどん』説を調べると香川県人であっても79.8%の人はやはり年越し蕎麦というほど、日本人に根付いた風習である。店ばかりでなく家庭で食べるケースがかなりあることから、このブログでは扱いを断念した。
前置きは長くなったが、今回取り上げるのは『◯◯南蛮』という蕎麦である。南蛮とは四夷の一つで東夷・北狄・西戒・南蛮と中国人が周りに住む異民族を蔑視した言い方である。日本でも同様の使い方をしていたが、室町時代にヨーロッパ人との貿易が始まって以降はヨーロッパ人を南蛮と呼ぶようになった。
このため、オランダ人がネギを好んだことから南蛮という説、大阪のなんばでネギが多く栽培され、これを鴨そばにいれたので『かもなんば』が転じて『かもなんばん』となったという説に分かれる。ともかく、ネギを入れた蕎麦を南蛮と呼ぶのは間違いない。
そこで色々な◯◯南蛮を食べてみる。最初は鴨南蛮、日本橋小舟町には『浹(あまね)』という京風鴨そば専門店がある。値段は1100円とリーズナブルで私はこれにかやくごはん(一口200円)を付ける。
鴨南蛮を運んできてくれる店の人が『粉山椒がよく合いますよ。』と教えてくれる。指示通り粉山椒を振って食べ始めるが鮮やかな緑色の九条ネギがたっぷり乗っているのが京風で、これが美味い。蕎麦も量がしっかりあり、鴨で取った出汁との相性も抜群。鴨も肉の部分はもちろん、皮もやや固いが噛めば噛むほど味が出て、いつまでも噛んでいたくなる。
また、かやくごはんは本当に少量だが、味が変わり、さらに添えてある柴漬けもいい仕事をしている。普通の蕎麦よりはかなり高いが、一冬に何回かは食べてしまう。
次は『天南そば』である。東京メトロ銀座線浅草駅の出口を出て、雷門と反対側に歩いたところにある『尾張屋支店』、天ぷらそばや天丼で有名な老舗だが、ここには『天南そば』(1150円)がある。暮れになるとこの店は常連のお年寄りたちがやってくる。話を聞いていると『尾張屋さんは支店と本店で微妙に蕎麦の味が違うんだよ。』とざるそばを啜るご老人、店の人は『おんなじ粉を使っているんですがね。やっぱり、分かる人には分かるんですね。』なんと『かえし』がうまいんだろう。(やはり蕎麦屋さんだからか)
などと考えているうちに天南そばが登場。
丼から3分の1くらい海老天が飛び出している。蕎麦からいただくが、揚げたて天ぷらの胡麻油の匂いが溶け出して蕎麦もうまい。天ぷらの上には縦切りにしたネギ、少し煮てあり、甘い。海老天を齧るが熱くてなかなか噛みちぎれない。
出汁も濃い目、やや甘めで剥がれた天ぷらの衣が美味い。ただ、半端なく熱く、ふーふー言いながら平らげた。老舗の人気メニューだけあって大満足である。一気に身体は暖かくなった。
浹 中央区日本橋小舟町4ー10
05058728065
尾張屋支店
台東区浅草1ー1ー3
0338418780
実はまだ◯◯南蛮はあるので来年に続く。