Vol.1「殺人処方箋」はこちら。
1971年の作品。第一作「殺人処方箋」の人気もあってシリーズ化が決定。そのためのパイロット版なのだが、なんと前作から3年も経過している。いまでは考えられないペース。でも上質のドラマを制作するためには必要な時間だったのかも。聞いてるか、日本のテレビ局。
今回の犯人は女性弁護士。財産目当てに結婚した夫を射殺し、誘拐事件で殺されたように偽装する。コロンボは犯人からの電話に対応する彼女が“言わなかったこと”に着目して誘拐事件など存在しないことに気づき、前妻の娘を使って罠をしかける……
弁護士の木村晋介が「本の雑誌」の連載で、ノベライズされた「死者の身代金」(よく考えると見え見えのタイトルですな)にいちゃもんをつけている。
曰く「高収入であろう敏腕の弁護士が、いくら時間がないからといって、娘を追い払うために番号が控えられている(あるいはマーキングされている)身代金を使用するはずがない」というもの。
もっともな話だ。他にも、身代金受け渡し用のバッグを警察が用意したときはどうするのか、など犯罪としては穴が多い。でも、ドラマではこの弁護士をリー・グラントが演じているので説得力が違う。上昇志向が強く、欲深で、なによりも日ごろから警察をなめきっているあたりを、同時に艶めかしく演じている。なにしろ彼女はあの「シャンプー」(1975)の欲求不満の人妻役ですから。わたし、好きだったんです。
「殺人処方箋」で“犯人と同じ手口”で罠をしかけたコロンボは、今度は犯人の性格を利用する。
「人は金さえもらえば肉親を殺された恨みも忘れてしまうもんだ、あんたそう確信した。あんた自身がそういうタイプだからだ。そこが誤算、とんでもない思い違いさ。マーガレット(娘)を買収できると思った。それが命とりだった。」
「構想の死角」につづく。