新作が出ていることなどついぞ知らなかったジェイムイズ・クラムリーの私立探偵C.W.シュグルーもの。いったい何年ぶりなんだ。ってことで全部読んでいるはずなのに前作までがどんなストーリーだったかすっかり忘れていて、おかげでまっさらの気持ちでこの巨匠の作品に向き合えた。年をとるって便利。
謎を解明する酔っぱらい(&ヤク中)探偵シュグルーの行動規範が「正当」なものであるとしても、その過激な行動と事件そのものは「狂気」にみちている。
友人である精神科医から患者たちの動向を探るように依頼されたシュグルーは、気が乗らないながらに監視を開始する。その眼前で患者たちは次々に異様な形で死んでゆく。あまりに奇態な現場がつづくために、シュグルーの神経は痛めつけられ、かろうじて保っていた家族の絆も危うくなる……。
事件の根幹をなすのは、ある人物の病んだ復讐の念だが、もちろんクラムリーはもうひとつの要因を用意している。これがどうにも困ったもので、わたしも若いころに夢想した(笑)犯罪なのだ。もうちょっとひねってもよかったと思うのだが。
まあ、そうはいっても殺伐たるストーリーのなかに、クラムリーの場合はこんなセリフが仕込んである。
「あなたは女性を信じて厄介ごとに巻きこまれるタイプですね、ミスター・シュグルー」
「人がウソをついていると思うより、ほんとうのことを言っていると考える方がやりやすいんじゃないかと思う。それが、厄介な世の中に対する怠惰な男の対応策です。」
次作が、楽しみではないか。あら、もう出ているのかな?ネットで調べてみよう……
米推理小説家のジェームズ・クラムリー氏が死去
米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、16日、米モンタナ州ミズーラの病院で腎臓と肺の疾患による合併症のため死去、68歳。テキサス州生まれ。69年の「我ひとり永遠に行進す」を皮切りに11冊の小説を出版。ハードボイルドの傑作とされる「さらば甘き口づけ」などが邦訳された。(共同) 2008/09/22
……え。えええっ!?