事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「小暮写眞館」 宮部みゆき著 講談社

2011-03-01 | ミステリ

Kogureshashinkanimg01 心霊写真をめぐるお話。「龍は眠る」のように、“その現象は超能力かもしれないが現実にも起こりうる”きわどいラインをねらうのかと思ったら、ストレートに心霊が肯定されていたので意外。

だから、昭和に設定された時代劇と考えた方がいいのかもしれない。平成のお話なのだけれども。

主人公と、彼をとりまく家族、友人は魅力的。しかしあまりに優しく、あまりに他者を思いやるために息苦しくさえ思える。

宮部みゆきの作品を読むと、どうにも怒られているような気がするのはわたしだけではないと思う。それほどに、まっとうな生活とはこうあるべきだ、という彼女のマニフェストは、正論であるがゆえにきつい。

ところがこの作品には、およそヒロインらしくない登場をする自殺志願者が出てきて、これが読ませる。寒空の下、主人公の高校生とふたりでベンチにすわり、結果的にお互いがお互いの名探偵になってしまうくだりなど、やるなー。結末の哀切さは比類がない。いやしかしここまで泣かせなければならないんですか宮部先生。

コメント
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