宮迫博之、木村祐一、ぼんちおさむなど、吉本の芸人たちが大挙出演。これはもろ刃の剣で、たしかに板尾にとって気心が知れた俳優にかこまれて監督デビューしたかったのだろうが、コント芝居に金を払うつもりはない、と突き放す人もいるだろう。
「ケータイ大喜利」などでの板尾の切れ味するどいコメント芸にうなりながら、わたしだって普通ならスルーしていたかもしれない作品。
でも、ただようダークな雰囲気がどうしてもわたしを誘っている……観てよかった。これは面白い。
ほんの微罪(なにをやったかはお楽しみ)で投獄された男が、なぜか脱獄をくりかえし、いつも線路脇で捕まってしまう。彼の目的はいったい何なのか……
脱獄方法がかなり考えてあって、この部分がしっかりしているものだからコント芝居とは無縁。特に、わざわざ看守に殴られるようにしむけて“あるもの”をゲットするくだりにはうなった。
吉本勢をとりかこむのが國村隼、木下ほうか、津田寛治などの渋い役者たち。それぞれいい味をだしているなかで、やはりダントツに國村がいい。影の使い方などでキリストと露骨にだぶらせ、父のイメージが付与されているので、看守から高官に出世しながらも脱獄王を息子のように見守ってしまう……こんな芝居は彼でなければ。
そして、一言もセリフがない板尾が、ただ一度声を発するのがどんな場面だったかも要チェック。かなりリスキーな描写なのに、うまくしのいでいるし効果的。やるなー監督板尾。役者としても「空気人形」同様におみごとな演技です。
あ、ちなみに脚本を書いた増本庄一郎って、富永みーなの旦那ですって。びっくり。