その55「第三の時効」はこちら。
かつて数多く設置されていた公衆電話。学校にもほぼ例外なく(色はそれぞれ違うとはいえ)置かれていた。
でも携帯電話が普及する以前から、たしか電電公社が民営化されたあたりから次々に撤去されていった。採算がとれないのをいつまでも置いておくほど民間会社は甘くないぜ、と。
撤去要請に学校は困惑。数は少なくとも「迎えにきてー」コールの需要は確実にあるわけだから。しかたなく職員室の電話を開放したところもあったときく。笑えたのは、撤去させないためにわざわざ仕事の電話をオモテの公衆電話でさせていた会社(学校じゃなくって)もあったっけ。
噂の「64(ロクヨン)」ようやく手に入りました。ほぼすべてのミステリランキングでベストワン。とてつもなく暗いオープニングなので、ここからどうするのかと心配していたら……なるほど、そうきたか。
でもこれは確かにみごとな警察小説だし、マスコミ論でもある。しかしミステリとしては………………そうだったのかっ!作品の長さそのものもトリックになっていたわけだ。
このトリックを成立させるために、昭和64年(わずか7日間しか存在しない。卒業証書の印刷に間に合ってよかった。すいません不敬で。ちなみに大正15年は12月25日まで存在した)の事件発生はゆずれなかったってことかな。強引さはさすが横山流ですかね。匂いとしては「クライマーズ・ハイ」に近いのでお好きな方はぜひ。
警察小説史上、初めてであろう広報官が主役。警察はなぜ報道機関に情報を渡すのかの正解がここにある。正確に報道されなければ、世間は警察に協力しようとも思わないわけだ。
かつて月刊横山秀夫とまで揶揄された量産体制が一気に終息し、長い沈黙に入ったのを不思議に思っていたけれど、体調を崩していたとは。そしてその沈黙からの復活がこの作品とはさすがではある。おみごと。
おい、最初に長々と公衆電話について語ったのはなんでなんだって?その情報を渡したらきっと怒られるー!
その57「マークスの山」につづく。
64(ロクヨン) 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2012-10-26 |