ピッツバーグ。白昼堂々、駐車ビルからスナイパーが公園にいる市民を射殺する。6発消費し、5人が死ぬ。ただひとつ人体に当たっていない弾丸と、駐車料金を支払ったコインの指紋から犯人はただちに特定され、イラク戦争時に同様の事件を起こしていたことから緊急逮捕される。しかしその“犯人”が要求したのは「ジャック・リーチャーを呼べ」という不可思議なものだった……
軍の秘密捜査官だった過去を持つジャック・リーチャー(ちょっとネタバレになりますが、日本だと土井正三とか篠塚利夫という名前に該当します)を演じるのはもちろんトム・クルーズ。
携帯電話を使わず、免許証もクレジットカードも持たない住所不定のホームレス、じゃなくてアウトローという設定なので、じゃあどうやって彼を呼ぶのかと検事局が困り果てたところへいきなり乗りこんでくるオープニングと、その経歴をいかして事件の謎をバシバシ解いていく過程がいい感じ。
なぜ逆光で、薬莢の処理が必要な場所から狙撃したのか、なぜ無差別殺人まで行った人間が駐車料金を律儀に払ったのか(駐車禁止のポストはなぎ倒しているのに)……おー、名探偵登場です。
この名探偵は、鉄鋼の町にふさわしいカマロをチンピラからぶんどってカーチェイスを始めるなど、肉体派でもあり、映画向き(笑)。イーサン・ハント以外に当たり役がもうひとつ必要だとトムは計算したのだろう。あいかわらず勤勉で強欲なハリウッド人である。もっとも、北米ではいまひとつ集客できなかったあたりもトムらしい。
でも日本ではうけている。いつもいつもトムにこれだけ貢献しているのだから親日家にもなるだろう。よく考えたら(文句たれながらも)いつもいつもわたしもトムの映画観てます。
なぜ黒幕はそこまでして“あること”がしたかったのかが判然としないし、ジャック・リーチャーの正義感がどこからくるのかの説明もまだだ。ロバート・デュバルとの共闘の背景もいまひとつ。だからおよそ上等の出来とはいいかねるけれども、なんか愛すべき作品なのでした。
それは多分に、ごひいきロザムンド・パイクの桃のような魅力に悩殺されたこともあるかな。監督は彼女をどれだけ魅力的に撮るかに執心したみたい。ふつう、人質にされて銃を向けられているときに、あんな微妙な脚の組み方はしませんよ(笑)。