万城目学は今回もまた直木賞をとれなかった。いや、西加奈子の受賞には文句ないんだけれど、「悟浄出立」が候補作のなかで最初にふるい落とされたあたりがどうもなあ。
これで5回も候補になっていて……でも万城目はまだいい。佐藤正午にいたっては、候補にすらなっていないんだよ。一度もですよ。
どういうことなんだろう。「永遠の1/2」ですばる文学賞をとって順調なデビュー。以来、「リボルバー」「恋を数えて」「個人教授」「Y」「ジャンプ」そしてあの「身の上話」など、傑作を連発しながら、しかし賞にはとんと縁がない。
その分、映像化では恵まれていて、映画史に残る傑作「リボルバー」(監督藤田敏八)や、NHKでドラマ化されるとは思いもしなかったが「書店員ミチルの身の上話」は最高だった。
賞には恵まれなくても世の中には“正午派”と呼ばれる彼のファンが数多くいて、この久しぶりの長篇を待っていたのである。わたしも待ってました。
この「鳩の撃退法」は、しかしなかなか一筋縄ではいかない。一家失踪事件を中心とした人物たちがまず登場。そこに、彼ら登場人物たちに起こったことは“こうだったかもしれない”と記述する作家があらわれ、彼自身も事件にからんでいく。
この小説家はもちろん佐藤自身がモデルになっていて(モデルの方は直木賞を二回とっています!わはは)、一人称と三人称が入り乱れ、時系列は激しく往復し、事件の真相への到達に上下巻が必要になったわけ。
とっつきは悪そうだけれど、しかしいつもの佐藤タッチは健在で、特に会話のおかしさには何度も吹き出した。こういう、淡彩なおかしみってのが直木賞に向かない理由なのかしら。万城目もそういえば、にじみ出るユーモアの人だしね。
とりあえずまたまた映画化希望。主役には……週刊現代で日本でいちばんうまい俳優にランキングされた堤真一が作家で、“あの男”には長谷川博巳でいかがでしょうか。