「観たんすかデスロード!今度のインターセプターはどんなだったんすか?」
先日、いっしょに野球を見に行ったマッドマックスフリークは意気込んで訊いてくる。知らんがな。
確かにわたしは前3作をすべてリアルタイムで観ているけれど、それにしたってもう「サンダードーム」から30年近くも経っているのだ。忘れてますって。
忘れなかったのは監督のジョージ・ミラーの方だ。もう70才なのに過激な描写はあいかわらず。というかわたしはこれまでのどの作品よりも興奮した。ホントよ。
核戦争後の世界は、水とガソリンを所有する者がチカラを持っている。家族を自分のせいで失ったトラウマを持つ男(観客の誰もが名前を知っていながら、彼は名無しでとおす)は、狂信者の組織に拉致され、ハイオク血液(笑)の補給源として生きながらえている。
組織の大隊長フェリオサ(シャーリーズ・セロン)は、リーダーの子を産むためだけに“飼われている”女性たちを救うために組織を裏切る。追撃する暴走軍団。マックスは血液袋としてそのチェイスの渦中にいる……
設定が異様な分、ストーリーは極端にシンプル。駅馬車に乗り合わせた淑女を救う孤高の騎士といった風情。そう、まるっきり西部劇なの。シンプルだけれども、血液補給源であることが後で生きてくるあたり、脚本は練られている。逃走するタンカートレイラーのスピードが、マックスたちのテンションと比例するなど映画的な興奮も満載だ。
特に、棒高跳びのポールみたいなのの先に人間が乗り、しなりを利用して女性たちを釣る人間フィッシング(すみません勝手に名づけました)など、いったいどうやったらこんなシーンを思いつけるのだろう。
未来でありながら、感じ取れるのは前世紀的内燃機関の音と匂い。すばらしい。
マックスを演じたのはトム・ハーディ。「裏切りのサーカス」の若手スパイ、そして「ダークナイトライジング」のペイン役のあいつです。メル・ギブソンと同じように、ほんの少しだけ眼に不安げな光があって素敵。とにかく面白い。ぜひ映画館で!