PART1「玄人好み。」はこちら。
「俺の悪口言って、皆上がって来いよ」
「俺は田中派だが、あいつだけは許さない、と言って上がって来るんだぞ」
石破茂自民党元幹事長が披露した、ロッキード事件当時の田中角栄が派閥の会合で放ったことば。
この当時、田中角栄への逆風は恐ろしいくらい。いま思えば田中の金権体質よりも現内閣のお子様ぶりの方がよほど国民にとって不幸だった。マジ。でもこの発言はやっぱり意地でも言うよね、普通。言わないのが現政権だけで。
田中の親分っぷりに比べて、いまの自民党の体質を露骨に示したのが都議選だった。
「どういうつもりで書いているか知らないが、我々はお金を払って(新聞などを)買っている。そのことを忘れてはだめだ」
「落とすなら落としてみろ。マスコミが選挙を左右すると思ったら大間違いだ」
二階俊博幹事長の応援演説。
それどころか後藤田正純副幹事長は、街頭演説で自民党の問題点を指摘したら、党幹部から注意されたという。
きわめつけはこれだ。
「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」
もう今年を代表するセリフになってしまいましたね。都議選でただ1回の演説を、自分のフランチャイズである秋葉原(へーえ。確かに若い世代ほど内閣支持率は高い)でやったら、ヤジや「アベやめろ」のプラカードの嵐に激高した首相の、おそらくは本音中の本音レス。これまでがうまく行きすぎていたのに、つい調子に乗ってしまった結果がこれだ。攻めているときはいいが、守りに入ると脆い人なのは第一次のときで承知していても、ここまでとは。
彼を支持する人たちにも似たことが言えて、内閣が調子のいいときは反安倍勢力を冷笑することができた。そう、冷笑こそが彼らがもっともしたいことなのだった(でしょう?)。しかしそうは行かなくなったので、彼らの態度は「無視」か「哄笑」に変わりつつある。ちょっと前なら、想像もしていなかった世間のムード。潮目は変わったなあ。
にしても稲田前防衛相の離任の映像にはおそれいった。幹部が「(式を)辞退するだろうと思ったが」とコメントしたのは当然。しかし満面の笑みはきっと強がりではないんだろう。いやはやすごい人物が大臣をやっていたんだねえ。
2017年8月号PART1「日本銀行」につづく。