その89「慈雨」はこちら。
長崎尚志の名に、反応しない漫画ファンはいないはず。
編集者として浦沢直樹とコンビを組んで「MASTERキートン」「プルートゥ」「20世紀少年」などの傑作を連発し、同時によくわからないスキャンダルで小学館を退社し……毀誉褒貶の激しい人物ではあるようだ。
漫画よりも個人的作業の色が濃い小説というメディアでどうなのか、とても興味があったのでこのミステリを読んでみた。
前半は、漫画的色彩を排除したように地味な捜査がつづき、おー、これはなかなか読ませるじゃないのとうれしくなる。惜しむらくは後半の展開が大風呂敷を広げすぎたのではないかと……世田谷の一家惨殺事件を下敷きにしている、一種のモデル小説。この人の作品を次も手に取るかは、うーん微妙なところです。
その91「走狗」につづく。