え、と思った。いや彼の人生は病気の連続で、だからいつそうなってもおかしくはないと思っていても、石原プロ解散云々はつい先日のことではなかったか。ああそうか、それは彼の幕引きの意味もあったのか。
渡哲也が亡くなった。
自分で予想していた以上に動揺。ある意味、日本の芸能界の支柱のような人物でもあった。若山富三郎の退場とちょっと似ているかもしれない。似ていないかもしれない。
お若い方々には、とんねるずの石橋が彼へいたずらを仕掛け、しゃれで激怒して見せたことに石橋が腰を抜かしていたことで印象深いかも。あるいは、食わず嫌いに出演したときに、どうして長芋が食べられないのかという敗戦の弁で
「鼻水食ってるみたいじゃないか」
と吐き捨てたのには、彼が“スター”だったんだなあとしみじみした。
そんな大御所のイメージは、もちろん「大都会」「西部警察」に始まる黒岩や大門のイメージがあるからだと思う。石原プロに所属する面々は、完璧に彼に私淑しているようだったから。
わたしが今でも忘れられないシーンは「大都会PARTⅡ」で、それやっちゃダメだよと怒られた松田優作が「クロさん(渡哲也)がそう言ったの?じゃ、しょうがないか」と言うおちゃめなとこ。あの優作さえ彼に頭が上がらない役をうれしそうに演じていたのだ。渡哲也の包容力がうかがいしれる。
かつて石原裕次郎は「犬」というアクション映画の企画を実現させたかったわけで、それがかなわなかったことを後継者としての渡は後悔していたかもしれない。
テレビでは他に「勝海舟」「秀吉」「浮浪雲」などがあるけれど、やはり忘れられないのは映画「仁義の墓場」と「やくざの墓場」だ。本当に怖いのはこの人だし、本当に女のことを考えていたのはこの人だと納得させてくれた。女の遺骨を食うあたりの描写は凄みがあった。
彼の趣味は焚き火。ああ、そういうことですか。焚き火、いいですよね渡さん。いまちょっと泣いています。
ああ、もっと語りたい。以下次号。