第2次安倍内閣になってから、防衛費は肥大化し続けている。それはみんな知っていることだし、内閣のタカ派的体質が背景にあるのだろうと誰だって思う。東京新聞で「税を追う」とする調査報道キャンペーンを開始した取材班のトップもそう考えていた。
ところが、数字を追っていくと、どうも内情はもっと情けないことに気づかされる。FMSという存在が大きかったのだ。
Foreign Military Sales 「対外有償軍事援助」
民間の商社を介在せず、アメリカ政府が窓口となる政府間取引。特にトランプが米大統領になってから増額の一途。現場が要望していない兵器をアメリカの言い値で買い、おまけに維持費も高額。自動車の関税引き上げをちらつかせるトランプのご機嫌をうかがうために、むしろ日本の首相のほうが意欲的でもあるようだ。
その結果、どうなったか。
防衛費が硬直化し、自衛隊員の待遇は悪化。なにしろトイレットペーパーを使用する長さまで制限し、超過分は自費で購入する例まであるそうだ。
おまけに、防衛省はアメリカへの支払いに汲々とし、“兵器ローン”のために当初予算だけではまかないきれず、補正予算に支払いを忍びこませるという裏技が恒常化……
つまりは、愛国的な装いが特徴の現政権が、実に売国的であることがあからさまになっている。日本人の税金が、毎年じゃぶじゃぶとアメリカに渡っているのだ。
ん、するってぇとFMSの代表選手であるイージスアショアの配備をよく断念できたよな。河野防衛相の決断だったにしても、アメリカべったり、というかトランプべったりの首相がそれを認めたということは……どうやら日本もようやくトランプ落選の可能性に思いが至ったということか。
にしても、この本に登場する役人たちの姑息なこと。だいたいFMSのSalesを「有償援助」と訳すセンスが……
東京新聞はほんとうにいい仕事をしている。「税を追う」は2019年日本ジャーナリズム会議大賞を受賞。取材班には「新聞記者」の望月衣塑子も。