第34回「栄一と伝説の商人」はこちら。
脚本の大森美香さんの気合いが入った回だった。
アメリカからグラント元大統領がやってくる。男たちはこう考える。日本が一等国として認められる好機だと。
グラント将軍って日本に来てたんだとびっくり。来日がアメリカにとってどれだけの政治的貢献があったかはよくわからない。でも日本にとっては大騒動。とりわけ、民間にもその接待が期待されたのだから。
ひねくれた考えで言えば、だから官の側は醒めた目でグラントを見ていたとも言える。もう終わった人ではないか、そこまでやる必要があるのかと。民間にやらしとけと。評判悪いし(笑)。
しかし女性たちにとっては違う。夫人たちは彼女たちにとっての闘いがようやくやってきたと意気込み、そして勝利する。千代(橋本愛)がその代表だ。
白歯を見せ、ハグし、身体を寄せ合って舞踏するなど、攘夷の志士の妻として本来はありえない展開。少なくとも、それで視聴者(=当時の人々)の了解は得られないはず。
しかしここまで我慢に我慢を重ねた千代の人生が、そのすべてをひっくり返して見せる。彼女にとって、夫を応援すると同時に、自分をどう表現するかという最後の機会だったからだ。
「ぐるぐるいたします!」
そして、彼女にも死亡フラッグが立っている。来週は泣かされそう。
大森美香さんの作品を検索して「この声をきみに」(NHK)を見始めました。やれやれ、こっちでも泣かされそうだ。
第36回「栄一と千代」につづく。