事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ボトルネック」 米澤穂信著 新潮文庫

2009-12-23 | ミステリ

Bottleneck01 亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。

絶対に成就しないラブストーリー。真に邪悪な存在とはなにかを、こんなフォーマットにのせて語るんだから米澤穂信の底意地はかなり悪い。

自分がもし存在していなかったら、もっと世界は善いものになっているのではないか?とは青春時代だけに許される根元的な疑問。自分が世の中の隘路(ボトルネック)なのではないかという思いこみは誰でもおぼえがあるはず。でも、そこから大人になるまではほんの短い距離なんだけどな。

さて、これで彼のオトナ向け作品は全部読んだことになるのか。え?新作が出てるおーし。

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続・意外なふたり~美男の系譜

2009-12-22 | うんちく・小ネタ

「斎藤家のひとびと」はこちら

♯97 有島武郎 & 森雅之

Ukigumo04 この二人が親子なのは有名ですね。

有島の情死とは、乱暴だけど要するにめんどくさくなっちゃったんじゃないのか。アクティブで、蠱惑せずにいられない女性(ではなかったという説もあるけど)とつながり、その積極性に流されるうちに、死すらもイニシアチブをにぎられてしまったのだろうと想像しています。この人はなにしろ自分に厳しすぎる。だからこそ、ポキリと折れてしまったのではないか。

息子の森雅之(日本映画界最高の美男だと思います)の不倫にしても、なんかガッツが感じられないんだよな。色男とは、そんなものなのかもしれない。わたしにはよくわかります。いてっ!なにも殴らなくても。

次回は「師弟の愛憎

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「イングロリアス・バスターズ」Inglourious Basterds(2009 ワインスタイン・カンパニー)

2009-12-21 | 洋画

Inglourious_basterds_02 油断した。

 豪雪のなかを(しかも全国ニュースにまでなった鶴岡方面に向かって)シネコンに飛びこんだのは、タランティーノの新作の上映がもうすぐ終わってしまうからだ。

 こんな酔狂な客はわたしだけではなかったようで、うしろの方にもうひとりちゃんとお客さんがいてホッ。

 しかしわたしひとりだったら大声で笑ったり、確実に拍手はしていたな。それほどに、「イングロリアス・バスターズ」はいつものタランティーノであり、いつも以上のタランティーノでもあった。

 ストーリーはナチス占領下のフランスにおけるユダヤ人の復讐譚ということになっているが、ナチスを殺しまくる“栄光なき野郎ども(イングロリアス・バスターズ)”のリーダーであるブラッド・ピットは、始終ヘラヘラしっぱなし。バスターズも、よくもまあこれだけ下品な顔を集めたもんだとあきれるほど。戦争アクションを期待する向きは激怒するだろう。なにしろ彼らは屋外では一発も発砲しない!そんな戦争映画あるもんか。

 そのかわりに残虐シーンのオンパレード。ネイティブ・インディアンの血をひいているから(勝手な理屈)と、ブラピはナチスたちの頭の皮を収集し、生かしておく人間のひたいにはハーケンクロイツの傷を刻みこむ。カタルシスがあるんだかないんだかわからない設定。まあ、ユダヤ系の観客は卒倒するほど喜んだろうが。

 タランティーノが痛快爽快な娯楽映画をめざしていたわけではないのは誰にでもわかる仕組みになっている。なにしろ上映時間は2時間半以上もあり、SSによって家族を皆殺しにされたユダヤ女性の復讐劇とバスターズの作戦は最後の最後までかみあわない。

 しかし見せる。

 オープニングの、地下室にかくまわれているユダヤ人家族を、SSの大佐が見つけだすまでの緊張感。パリに潜入したバスターズが、ナチスと鉢合わせしてしまった酒場における一触即発のやり取りと、例によっていきなり始まる祝祭のような銃撃戦への転調。音楽が「アラモ」に始まり(デイビー・クロケットが登場するような映画ではないにもかかわらず)、主役の女性が戦闘モードに入るときに流れるデビッド・ボウイの懐かしき「キャット・ピープル」のテーマがナスターシャ・キンスキーを想起させ(というよりカトリーヌ・ドヌーブそっくりです)……

 なにより役者の選択がすばらしい。

 一瞬たりともシリアスな表情を見せないブラピのへたれ野郎ぶりもいいし、「グッバイ・レーニン!」で親孝行なところを見せたダニエル・ブリュールのけた違いの失恋には苦笑。カタン、とスィッチが入ったようにどう猛になるメラニー・ロランの美しさときたら……

Inglourious_basterds_04  でも、今回は「ユダヤ・ハンター」であるSSの大佐を演じたクリストフ・ワルツにとどめをさす。上品な物腰と小狡い表情で次第に相手を追いつめていく彼の演技こそ、ヨーロッパの重みを感じさせてすばらしい。別に顔が大きい(「ジャイアント・フェイス」と作品内では表現されている)から応援しているんじゃないですよ。こんな俳優がほとんど無名でいたことのほうに驚かされる。そして、彼を抜擢し、ラストのびっくりするような展開のキーパーソンに仕立てたタランティーノの慧眼にも感じ入った。やるなあ。

 映画オタクであるタランティーノは、今回もファン向けにさまざまなメッセージをしこんでいる。レニ・リーフェンシュタールへの言及なんぞ、今や映画史家かタランティーノしかやってくれないだろうし、ドイツ映画に詳しいから、と映画評論家が潜入作戦の指揮をとるあたりのバカバカしさもいい(ちゃんと必然性があるように描かれてますけど)。ユダヤ人の得意技である映画製作において、ドイツ人が優越しようとしていたことも今回の作戦の背後にはある。

 なにより、復讐劇の舞台となるパリの映画館こそ主役級の存在感。カンヌ映画祭でいちはやく自らの才能を認めてくれたフランス映画界への恩返しでもあるのだろう。なにしろ、TVシリーズにしようと思っていたタランティーノに、

『君は、私を映画館に向かわせる数少ない監督の一人なのに、次の映画まで5年はお預けだなんてがっかり』

と激励してくれたのはリュック・ベッソンなのである。いいぞリュック。あんたも頭がでかいだけのことはある。

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今日から公開の「ウルルの森の物語」は……

2009-12-20 | 邦画

……もちろんわたしのような心の汚れた人間には無縁の映画だけど、読者からこんな情報が寄せられてますよ。某教育会館(バレバレ)に掲示してあるんですって。きっと同級生情報だな。

Ururuそういえば小林武史が初めて監督した 「BANDAGE バンデイジ」(赤西仁主演 2010年1月16日公開)もあることだし、こりゃー2010年の映画界は最上旋風か。

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港座通信~港座オールナイト&モーニング

2009-12-19 | 港座

11月上映会特集はこちら

09年最後の上映会はこれまでのパターンとは違い、クリスマス(25日)の朝にモーニングショー。そしてレイトショー。大晦日にオールナイト興行を決行します。これまで、時間の関係で参加できなかった方々もぜひご来場ください。

なお、クリスマスの上映会においてはサンタのコスプレで来場、大晦日には破魔矢をご持参いただくと、半額サービスとさせていただきます!

12月25日(金)

大劇場

9:30 ローマの休日

20:00 ローマの休日

22:30 シャレード

小劇場

9:30 素晴らしき哉、人生!

20:00 シャレード

22:30 ローマの休日

12月31日(木)

大劇場

20:00 グレン・ミラー物語

22:00 グレン・ミラー物語

0:00 バンド・ワゴン

小劇場

20:00 バンド・ワゴン

22:00 イースターパレード

0:00 アメリカ交響楽

おなじみオードリー・ヘップバーンの代表作と、聖夜とニューイヤーズイブにふさわしい作品をそろえました。ご期待ください。メリークリスマス&ハッピーニューイヤー。

※港座でのクリスマス上映会や大晦日のオールナイト興行は、実はこれが最初ではなくて、これまでも何度も自主的に行われてきたもの。破魔矢でのサービスは当時からの恒例。なんか、いいルールだなあ。

「素晴らしき哉、人生」はクリスマスの奇跡の物語だからわかるとして「ローマの休日」とクリスマスは関係ないじゃないかって?いやいや、聖夜にあのイノセントなお姫さま物語はぴったりです。

大晦日は音楽関係でそろえました。あまりおなじみではなさそうなのが「アメリカ交響楽」ですが、原題「ラプソディ・イン・ブルー」でおわかりのように(わからない人のために違法を承知で「のだめ」バージョンを挿入しています)、ガーシュインの生涯を描いたもの。全編に彼の美しいメロディが流れます。音楽好きで知られるウディ・アレンの映画でもおなじみ。年越しに“完璧な音楽家”といわれた男の、実は哀しい物語をどうぞ。

1月はちょっと驚くような映画を上映します。お楽しみに。

港座オフィシャルブログはこちら↓

http://minatoza.exblog.jp/

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刑事コロンボを全部観るVol.11「悪の温室」The Greenhouse Jungle

2009-12-19 | テレビ番組

Vol.10「黒のエチュード」はこちら

Ministryoffear  古い邸宅にしのびよるカメラ。灯りを落とした温室があり、邪悪な妖気を感じさせる……さすが、「刑事コロンボ」はユニバーサル制作だけに、恐怖映画の手法はお手の物だ。

今回の犯人はこの温室で蘭を栽培する男(レイ・ミランド再登場)。莫大な遺産を受け継いだ甥(ブラッドフォード・デイルマン……吹替は山田康雄です)を、財産目当てに殺害する。

 妻の浮気に悩む甥っ子は、父親から信託財産の形で遺産を相続しており、“緊急時”にしか大金を手にすることができない。そのため、妻の浮気相手に手切れ金を用立てようと叔父の偽装誘拐の計画にのってしまう。「パイルD-3の壁」の回でもこのパターンだったし、信託財産ってむしろ犯罪の温床なのでは?

 運転席に拳銃を発射し(第一の銃弾)、その車を崖から転落させて甥っ子が誘拐されたように装ったあと、叔父は用済みとばかりに甥を射殺する(第二の銃弾)。

 コロンボが犯罪を立証するのは第三の銃弾の存在によってだけれど、ここはもうひとひねりあってもよかったところだ。むしろこの回は、部下として登場するエリート刑事とのかけ合いを楽しむべきだろう。捜査のために暗視カメラを持ち出した部下にコロンボは

Thegreenhousejungle02 「自腹で買ったのかい?」

「は。任務に万全を期したいと考えまして。」

「……お前さん、ひとりもんだろ。」

車の転落した現場では

「ガイ者の他に二名いたことが明瞭です!」

「……明瞭すぎるね。」さすが、名刑事である。

結果的に巨額の財産は浮気性の妻(サンドラ・スミス……かなりセクシーです)に遺される。そんな彼女を、コロンボは決して道徳では裁かない。しかし、このずる賢い天使は最後にちょっとしたいたずらを彼女にしかけるのだ。やるなあ。

Vol.12「アリバイのダイヤル」につづく

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明細書を見ろ!09年12月号~ホーム・スイートホーム

2009-12-18 | 明細書を見ろ!(事務だより)

ボーナス特集号で今月から(よほどの若手をのぞき)給料月額が下がったことはお知らせしました。他にも変更点(便利なことばです。全部下がっているんですけど)はたくさんあります。気がのりませんが紹介しましょう。

・給料

Gonzo03  やっぱりこれはくわしくもう一度。ほとんどの人が年末調整がらみで(明細書の中段『所得税』の欄をごらんください)手取りが増えているその陰で、着々と減額がすすんでいます。しかし若手や期限付職員はまったく、あるいはわずかな額しか減額されていません。どうやら年令による給料額の推移をフラット化したい意図があるようです。それが定年延長を視野に入れてなのかは判然としませんが。

 さて、今日の給料袋にまるで昇給発令書かと期待させる書類が入っている人がいます。っていうかそっちの方が多数派です。残念ながらこれは単なる通知書で、給料を下げますよ、という県教委からの哀しいおたよりなのです。

ぶっちゃけ、某事務職員の通知書を例にとって説明すると、彼の通知書にはこう載っています。

『平成21年11月県条例第73号の施行に伴い、平成17年12月県条例第103号附則第6項の規定による給料○○○○円を給する』

※このお役所ことばの羅列は履歴書に記載することになっています。1月1日は昇給が待っているし、こりゃー事務職員は腱鞘炎にまっしぐらだ。

○○○○円を減額するのかと誤解されそうですが違います。これは何を意味するかというと、平成18年4月1日をもって県職員の給料額はかなり下げられたのをおぼえていますか?

だけど悪いことをしたわけでもないのにズドンと下げるのはどうも問題がある。そこでその前日、平成18年3月31日に受け取っていた給料額は保障しよう……これが現給保障。○○○○円はその保障額です。これがついに下げられたというわけ。

先月の明細書の最上段『給料・議員報酬・報酬』の欄の数字とくらべてもらえれば、初めて給料が下がった重みが感じてもらえると思います。でもみんな年末調整で舞いあがっちゃうんだろうなあ。

・住居手当

 他にも、特別支援学級担当者の『調整額』、ほぼ全員が受給している義務教育教員特別手当(減額は来月から)などの変更がありますがそれは来月号にまわすとして、いちばんわかりやすく、そして影響も大きい住居手当を解説します。

 解説、といっても今回の変更はいたってシンプル。要するに、持ち家に関する住居手当が全廃されたのです。

 実は、何年も前からこの手当には削減の動きがありました。しかし山形県は

○三世代同居率が高い

○したがって持ち家の比率も高い

○したがって異動によって引っ越しをするよりも遠距離通勤を選択する比率も高い

○国家公務員のようには官舎が充実していない

などの理由から、持ち家の住居手当の存在理由と受給者数は大きかったのですが……ということで先月まで明細書の二段目「住居手当」の欄に3000円(単身赴任者は半額の1500円)とあった方は、今日から空欄となってしまったという次第です。合掌。

2010年1月号「袋の中身」につづく

画像は「ゴンゾウ」テレビ朝日。読者は面白いと言うし、脚本は「ALWAYS」などの古沢良太。これは……と思ったらわたしにはダメだった。やっぱりテレビ朝日の刑事ドラマにすぎなかった。浪花節がミステリ的興味よりも優先しちゃうのね。内野聖陽が魅力的な俳優であることはわかっても、どうにもこうにも。

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人情とよそ者と

2009-12-16 | まち歩き

メルマガの方でも反響が大きかったのでブログでもとりあげておきましょう。

人情とよそ者と /山形

「瓶ビールを注文したのはきょうはあんたが初めてだよ。ほら、だから冷えてる」と言われた。酒田に着任の4月のこと。うまいと教えられ、ある焼き鳥店に入った。まちの人情を知ろうと旅行者と分かる服装で繰り出した。もつ煮はうまくもう1本注文した。すると生ビールが出てきた。「瓶はぬるいから」。前言を翻す言葉にあぜんとした

▲ラーメン店に入ったという旅行者から同様の話をきいた。注文するとそのメニューはないと怒鳴られ金額を払う際も追い立てられるように、しかもあとで多めに取られたのに気づいたという

▲よそ者に対する警戒心からか、それともそうした人情なのか。映画「おくりびと」効果で観光客が増えているのに残念至極。あの焼き鳥店をその後は再訪していない。

毎日新聞 2009年12月8日 地方版

……2ちゃんねる方面で盛り上がっている酒田ネタだ。まことに申し訳ない次第ではある。酒田人として謝罪はしておこう。

でも、ちょっとおかしくないか?

“まちの人情を知ろうと”

“旅行者と分かる服装で”(どんな服装なのだろう)

某有名焼き鳥店(まあ、想像はつくけれど)に出かけた新聞記者の、『ネタを拾いにいく』姿勢がどうにも鼻につく。

記者である前に客でもあるはずなのに、この上から目線はどうだろう。
日本語もかなりあやしい。

考えてもみてほしい。ラーメン店で“多めにとられる”とはよほどのことではないか。いったいその“旅行者”は、どんなオーダーをしたのだろう。

もちろんこれは地元民としての偏狭な物言いだ。署名原稿であることにはいつも敬服している。しかし皮肉と自戒をこめて、『うまい店ピンポイント』がこんな調子にならないように気をつけよう。あの焼き鳥店を、明日あたり再訪してみようか。

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続・意外なふたり~斎藤家の人びと

2009-12-15 | うんちく・小ネタ

Nireke01 「北関東の人」はこちら

♯95 斎藤由香(サントリー社員エッセイスト) & 北杜夫(躁鬱作家)

このふたりはご存じのように親子。これに斎藤茂吉と斎藤輝子と斎藤茂太が加わる。なんという一家だ。

ふたりが出演したテレビのトーク番組で、しかしいちばん笑わせたのは無理やり引っぱり出された北の奥さんだった。明るい彼女でなければ、およそ躁鬱の夫、狂気の義父、不貞の義母を御することなどできなかったろう。また、なんと小林信彦が杜夫の患者だった時代もあるという。おやまあ。

この組み合わせに似ているのが

♯96 しまおまほ(イラストレーター) & 島尾敏雄(不倫作家)

Shinotoge01_2  死の棘の一家ですもの、そりゃあ一筋縄ではいかない作風は孫に遺伝しますわね。

次回は「美男の系譜

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「このミステリーがすごい!2010年版」 宝島社

2009-12-14 | ミステリ

51sudr47iml 「この1冊」なんてブログを立ち上げておいて、こんなことを言うのはなんだけど、いやー読んでないな、今年はミステリを。年末恒例の「このミス」でチェックしたら、ベストテンで読みおえているのは

2位 「ダブル・ジョーカー」柳広司

4位 「追想五断章」米澤穂信

8位 「暴雪圏」佐々木譲

10位 「秋期限定栗きんとん事件」米澤穂信

の4冊だけ。それ以下を見わたしても

15位 「鬼の跫音」道尾秀介

17位 「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信

21位以下の
オリンピックの身代金」奥田英朗(順位におおいに異議あり!)

疑心」今野敏

太陽を曳く馬」髙村薫

うーん、どうなんだこれ。米澤穂信ファンでなかったらいったいどうなっていたことか。

海外編にいたっては

8位 「泥棒が1ダース」ドナルド・E・ウェストレイク

だけ(笑)

21位以下でようやく

暗殺のジャムセッション」ロス・トーマス

が入ってるのみ。いかにわたしの読書傾向が偏っているかの証左かも。いくらなんでも「ミレニアム」(スティーグ・ラーソン)と「ユダヤ警官同盟」(マイケル・シェイボン)は読みおえておくのが義務ってものだろ。

でも、言い訳もある。

わたしが好きな作品とは、読んでいる最中に作家の含み笑いが聞こえるような、余裕たっぷりのエンタテインメントなのだ。ウェストレイクやトーマス、そしてローレンス・ブロックの御三家の作品がなければ(トーマスはとっくに亡くなっているし、ウェストレイクも今年死んでしまいました。哀しい)、およそさみしい一年なのである。

近年にない豊作の一年だったとみんな総括しているようだ。でも、わたしのように“渾身の力作”よりも、余技でちょいと仕上げてみましたという作品が好きなひねくれ者にとっては……

にしても、リストアップされた諸作から、いったい何冊読んだかなーとチェックするのはすごく楽しい。○○文庫の100冊!とかいう企画があると、つい数えてしまいませんか?古典を読んでいないので気が遠くなったりするんですけど。ぴあのインデックスに蛍光ペンでマーキングしていた昔から、この習癖だけはどうにも。

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