ホタルの独り言 Part 2

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トウキョウサンショウウオ

2016-10-02 22:27:57 | 動物

 トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis Tago, 1931.は、有尾目サンショウウオ科の有尾類で、1931年に東京都あきる野市で発見された。関東一都六県に分布し、ミトコンドリアDNAの分子系統解析から、北部個体群(茨城北部、福島南部)と南部個体群(神奈川、埼玉、千葉、東京、栃木)の2つのグループに大きく分かれる推定されている。
 トウキョウサンショウウオは、丘陵地の谷戸の小さな湧水とその周辺の雑木林を生息場所としており、一生を水中で生活するオオサンショウウオ等とは異なり、普段は水場近くの雑木林の林床で、落ち葉の下のミミズ等を食べて生きている。そして3~5月の繁殖期にだけ、湧水の溜まった池や小さな流れに入り、クロワッサン状の一対の卵嚢を枯れ枝等に産み付ける。孵化した幼生は、2~3ヵ月で親と同じ形になり、上陸して雑木林で生活し、20年近く生きる個体もいる。
 今回、里山の雑木林で偶然に成体を見つけた。落葉の溜まった湿った林床で朽木の下に隠れていたものである。

 トウキョウサンショウウオは、年々、生息数が激減している。1998年の市民ボランティアによる調査では、東京都内において200カ所の産卵場と約5,000の卵嚢が確認されているが、これは、1匹のメスが1対の卵嚢を産卵し、またオス:メスの性比が3:2であることから、東京都全体でおよそ6,000頭(成体)しか生息していないことを指している。生息場所が里山であるため、里山そのものの大規模開発による環境破壊、放棄放置による環境悪化、ゴミの不法投棄による有毒物質の流失等が減少の大きな原因であるが、昨今では、アメリカザリガニや人為的に離されたアライグマによる食害が報告されている。産卵のために水中に入った成体をアライグマが次々に食べてしまうのである。更には、販売のための乱獲も減少に拍車をかけている。繁殖個体群の動態シュミレーションでは、50年後にも95%の確立で存続するためには、最少存続可能個体数(MVP)はメス100頭であるという研究結果があるが、現在の状況では、絶滅する確立が非常に高い。
 生息場所が多く個体数も多い千葉県では、水田耕作に依存度が高い特徴があるため、水量不足、水田の埋め立てや放棄など環境変化によって規模の大きな産卵地は半数以下に減少している。

 トウキョウサンショウウオは、環境省RDBで絶滅危惧Ⅱ類に、東京都、千葉県、神奈川県では絶滅危惧Ⅰ類、埼玉県、茨城県、栃木県、福島県では絶滅危惧Ⅱ類に選定している。また、東京都日の出町では町の天然記念物に、宇都宮市では、市の天然記念物に指定している。

参考文献・図書
日本産有尾類 佐藤井岐雄 著 第一書房
房総半島におけるトウキョウサンショウウオの生息域と特徴(2008)両棲類誌18

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トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400(2016.10.2)

トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400(2016.10.2)

トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F9.0 1/160秒 ISO 3200 +1/3EV(2011.3.19)

トウキョウサンショウウオの卵嚢

トウキョウサンショウウオ / 卵嚢
Canon EOS 10D / SIGMA 28-80mm F3.5-5.6 ASPHERICAL MACRO
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 1600(2010.03.06)

トウキョウサンショウウオの卵嚢

トウキョウサンショウウオ / 卵嚢
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 320(2012.3.25)

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