スミナガシ Dichorragia nesimachus nesiotes Fruhstorfer, 1903 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)スミナガシ属(Genus Dichorragia)のチョウで、日本からヒマラヤまでを含む東南アジアに分布し、低地から山地の雑木林に生息している。和名は、黒地に青緑色を帯びた独特の翅模様が「墨流し」で作った模様に似ていることから付けられた。赤い口吻(ストロー)とモノトーンの翅裏も心象的である。ちなみに「墨流し」は日本古来の伝統芸術で、千年以上もの歴史を持つ。その起源は、川の水面に墨をおとし、流れによってうまれる模様の変容を楽しんだ9世紀頃の宮廷遊びと言われている。
幼虫はアワブキやヤマビワなどを食草とし、成虫は花を訪れることは少なく、樹液や熟した果実、動物の糞などを吸汁する。年に2回~数回(稀に1回)発生し、春型と夏型の季節型がある。春型と夏型では、夏型の方が色が濃いが、白斑と黒斑は個体差によるものが大きく、春型と夏型による明確な違いはない。また、雌雄も色彩や斑紋等で明確な違いはない。
環境省カテゴリーに記載がないが、雑木林の減少や放棄放置で生息数が減少している地域もあり、千葉県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に、大阪府、香川県、宮崎県のRDBでは準絶滅危惧種としている。
スミナガシは、いつも偶然の出会いでの撮影。春型は、ミヤマカラスアゲハの撮影で待機中に飛んできた。今回の夏型も、ミヤマカラスアゲハの探索中に飛んできた。嬉しい出会いではあるが、単なるスナップ的な絵で終わっている。来年は、スミナガシを撮ることを主目的にした遠征も予定し、もっと美しい写真に収めたいと思う。ちなみに、夏型は初見初撮影である。
スミナガシの夏型に出会った週末は、台風一過で撮影のチャンスと思い、先に述べたように「ミヤマカラスアゲハの夏型」を撮ることを目的として遠征したが、場所の選定には迷いがあった。過去に「ミヤマカラスアゲハの春型」を何度も撮影しているポイントがあるが、自宅からおよそ70kmある山奥。もう一つの候補が、これまで一度も訪れたことのないポイントで、距離は50kmの山奥。さて、どちらにするか・・・
年々、体力の低下を感じており、また昨年末の前立腺がんの全摘手術後は、気力も低下気味。月~金は、今までと同じように会社でハードワークをこなしていることもあり、趣味でさえも「どうせ行っても撮れない」とか「撮っても他人と同じ絵」であるとか「以前に一度撮っているから」と色々と理由を付けて、行く前から諦めようとすることが多くなってきた。今回も、場所の選定は勿論、行くことさえ止めようかという迷いがあった。この迷いは夢の中にも出てきた。
7:00起床。家族と一緒に朝食を済ませ、結局、時間的に近距離である山奥に行ってみることにした。現地に着いて、砂利道の林道を歩く。カラスアゲハは、あちこちで吸水していたが、ミヤマカラスアゲハは、1頭だけ緑色に輝く翅を見せつけながら、私の周囲を飛び回り去って行った。ミヤマカラスアゲハは、崖から湧水が流れて砂利道が湿っているような場所が好きである。舗装された林道の水たまりでは、吸水しないことが再確認できた。天候的にチャンスがあれば再訪しようと思うが、ダメならば、来年にミヤマカラスアゲハの春型を撮りに来ようと思う。
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スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 200 +1 1/3EV(撮影地:山梨県塩山市 2013.5.25 9:27)
スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200 +1 1/3EV(撮影地:山梨県塩山市 2013.5.25 9:29)
スミナガシ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/4000秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8 13:16)
スミナガシ(夏型)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 400 -2/3EV(撮影地:東京都奥多摩町 2019.8.17 10:15)
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秋の三連休あたりに、和歌山にサツマシジミを撮りに行く予定なので、
大阪に寄り道しようかな。
また、連絡します。