日本に分布しているキチョウ属(Genus Eurema)は、以下の4種が知られている。
- タイワンキチョウ Eurema blanda arsakia (Fruhstorfer, 1910)
- ツマグロキチョウ Eurema laeta betheseba (Janson, 1878)
- キチョウ Eurema hecabe brevicostalis Butler, 1898
- キタキチョウ Eurema mandarina mandarina (de l'Orza, 1869)
上記の内、キチョウとキタキチョウは同一種とされていたが、DNA分析によって奄美諸島以南の南西諸島に分布しているものをキチョウ(ミナミキチョウ)として区別された。尚、タイワンキチョウは八重山諸島だけに分布するが、キタキチョウは、秋田・岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島に分布し、見た目だけでは同定が難しい。
今回は、これまでに撮影したキタキチョウとツマグキチョウを比較する意味でまとめてみた。
キタキチョウは、ネムノキ、ハギ類のマメ科の植物が食草で、平地~山地の樹林の周辺や草地や畑、市街地などでごく普通に見られるチョウである。
5月下旬頃から発生し、以降連続的に(5~6回)発生して晩秋に至るが、幼虫期の日長と温度によって夏型と秋型の季節型が現れる。季節型には、形態的な差異があり、夏型は翅表外縁の黒帯の幅が広いが、秋型は黒色の縁が先端に少し残るか、もしくはない。初秋の頃は、夏型と秋型が混棲するために個体数が多く、晩秋になると秋型のみが現れ、そのまま成虫で越冬する。
様々な花に止まって吸蜜するが、忙しなく移動する。夏には、湿った場所や河原などで吸水している姿も見ることができるが、翅を開くことはない。
ツマグロキチョウは、本州(宮城県以南)、四国、九州に分布し、乾燥した河川敷や堤防の草地などに生息している。夏型と秋型の季節型があり、秋型では前翅の先端が直角に角ばり後翅の裏面に暗色の筋状紋が現れるため、キタキチョウとは比較的簡単に区別する事ができるが、夏型での区別は難しい。成虫は夏と秋に発生し成虫で越冬する。夏型は発生地付近にいるが、秋に発生する秋型は生息地を離れた場所にも拡散して見られる。
キタキチョウがマメ科植物の多くを食べるのに対し、本種はマメ科のカワラケツメイのみを食草としている。カワラケツメイは主に河川の冠水地に生育する高さ30cm程度の一年草で、他の植物が生えにくいような乾燥した貧栄養の礫地に生育する。昨今では、河川改修や護岸工事、草刈りの放棄による植生遷移等でカワラケツメイが減少し、ツマグロキチョウも全国的に激減している。
環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類にランクされており、都道府県版レッドリストでは、東京都、千葉県、神奈川県で絶滅、茨城県、埼玉県、山梨県、群馬県、長野県、滋賀県、大阪府、香川県で絶滅危惧I類、その他多くの自治体で絶滅危惧Ⅱ類および準絶滅危惧種に選定している。(尚、神奈川県では、相模原市の市街地に生息していることが、2011年4月11日の毎日新聞に掲載されている。)
以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
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