散歩日記X

札幌を中心に活動しています。食べ歩き・飲み歩き・ギャラリー巡り・読書の記録など

東京紀行(またかよ) 9日夜

2006年10月09日 22時48分04秒 | 飲み歩き・東京
勝どきのホテルに荷物を置いてから、ぶらぶらと月島方面へ。今日は祝日のため開いている店が少ない。事前に調査しておいた「U」へと向かう。この店は何度か前を通ったことがあるのだが、開放感のある東南アジアの屋台の風情を持つ店である。

店内テーブルの一角に座り、ビール・ポテトサラダ・焼き穴子(タレ味)を注文。





すぐさま出てきたポテトサラダは、一人には十分すぎるボリュームだ。しばらくして穴子が到着。こちらは程よい分量であるが、500円という値段から考えると非常にお徳だと思う。カリッと焼けたところと、タレの味を満喫。寿司でも穴子が大好きな私であるが、思う存分に食べられるのが嬉しい。

何かもう一品だよなと、緑茶ハイとマグロホッペ焼きを注文。いやな予感は多少していたのであるが、到着した品を見てやっぱりと覚悟を決めた。



一人客にはちょっとボリュームありすぎだろう。頼んだ以上残さないのが私の基本スタンスであるが、いけるだろうか。マグロ自体は赤身の肉っぽいところと、脂の入ったトロケ加減のところが混じっており、味つけもとても美味しい。段々、箸のスピードが落ちる所をネギの力を借りてほぼ完食まで持っていった。

この店は大勢で「今日は魚食うか!」というときにはもってこいだろうな。私のような一人客と隣にいたカップルにはちょっと辛かったかもしれない。そのカップルは女性の方から「どうしてこんな店に連れてくるのよ!」オーラがちょっとだけ出ていたのであった。

とにかく苦しく、店を出た私は佃のほうまでぶらぶら散歩をしてから、ぐるっと回って再び月島に戻った。次は前回行ってみた「AT」へ。先客が5~6名いる中に入り、消化促進の意味でジン+ライム+ビタース多目のカクテルをお願いした。かなりたっぷり入れてもらったビタースが効く。



先客はどこかの青少年委員会の人たちらしい。しばらく様子を見ていたところ、ぐでんぐでんになった1名を送るために何人かが帰り、河岸勤めの人と、ダンディな男性が残り、私も会話に混ぜてもらうことになった。ダンディ氏は昔の並木通り界隈のバーの様子を教えてくれた。バーテンダーに任せると持っていた金額なりに飲ませてくれたそうだが、金のあるときは3000円くらい払っていたそうで、30年も前の話であれば結構な金額だっただろうと思う。

河岸氏は昭和43年頃に「初任給が10万いくらだったかなあ」という話をしてくれたが、やっぱりサラリーマンより相当良い金額なのだなあと思った。本人曰く「人の寝ている間に働いているからね」とのこと。私の2杯目はスペインのオルホ(粕取りブランデー)。マティーニを「マスターこれはキツイね」と飲んでいる河岸氏にちょっとだけ飲ませると「うわー、臭い」という感想だった。3杯目はストラスアイラ12年。

さて、次に入ってきたのは二人連れの男女(付き合ってはいないらしい)である。話を聞いていると高知出身で、男性は数年前、女性は4ヶ月前に東京に来たらしい。で、何故かこの女性が積極的に私に話しかけてくるのである。ちょっとアネゴっぽい彼女だが(年齢は私より下)、これが高知の「はちきん」という気質なのだろうか? 

非常に人見知りする私だが、ど真ん中から話しかけられて何だか波長が合い、楽しくなってきた。ジン+ライム+ソーダを追加して、もう少しお付き合いしてみることにした。男性の方も、連れてきた女性が周りの人とばかり話していたら面白くないのではないかと表情を伺って見たのだが、いい顔で笑っている。これはナイスガイだなあと話していると、私を含めた3人とも美術好きということが分かり、私は本日の美術館巡りの話をしてしまった。

さて、次に来たのがなんという偶然であろうか。私が前回この店に始めてきた時に話をした山本カントク氏(今日見たらそれほど似てなかった)ではないか。すっかり勢いのついた私は「大将、私のこと覚えてますか」と話しかけるわ、飲み物も追加するわとすっかり盛り上がってしまった。かろうじて翌日の仕事のことを思い出し、時間も覚えていないがホテルへ。
(20867歩)

東京紀行(またかよ) 9日午後

2006年10月09日 16時45分20秒 | ART
出張の前日から東京入り。3連休の最終日なので飛行機は見渡す限りほぼ満席。なぜ「ほぼ」かというと私の隣だけ空席なのである。楽で良いが、イジメにあっている人のようだ。



羽田から有楽町へ移動し、まずは出光美術館の「国宝 伴大納言絵巻展」へ。全く予想していなかったのだが、恐ろしいほどの込みようである。警備員の人に聞くと、展示ケースに沿って見るコースは2時間半くらいかかるらしい。ただし、そのコースのロープの後ろから見るなら、順番をまたずに入室してよいとのこと。先の予定がある私は、もちろん後ろから見ることにして入室した。

さて、絵巻であるが、以下の感想を持った。
・色彩が非常に豊か。オレンジ色なんて珍しく感じたな。しかも同じ色でも何種類もあるのが判る
・かな文字は源氏物語のような流麗可憐さはないが、キッチリしたウマさがある
・ストーリーが日本人好みだよね。「ああ無情」のよう
・前にTVか何かで聞いていたが、伴大納言は無罪という説があって、絵巻でも濡れ衣を着せたらしい男の背中の色が剥げているのだ。皆、「こいつが犯人なんだよね」と指をさしたせいらしい

かなり見ごたえのある展示であった。なお、常設展示のムンクの絵が入れ替わっており、「肘掛け椅子側の裸婦Ⅰ」が見られたので良かった。

続いて、竹橋へ移動し東京国立近代美術館「モダン・パラダイス展 大原美術館+東京国立近代美術館―東西名画の饗宴」へ。昼飯は途中のコンビニでいなり寿司とお茶。どうも時間が無いとなると手抜きになるな。



他の人のブログを読むと「パラダイス」をうまく表現できていない難解な展示だという意見が多いように思ったが、あまり私は気にならなかった。まず、面白かった作品は以下。

○徳岡神泉「蓮」:スーパーリアルともちょっと違うが、すごい描写力。
○ジャクソン・ポロック「カット・アウト」:ただのラクガキとはやっぱり違うなと。
○ゲルハルト・リヒター「抽象絵画(赤)」:緑と黒の背景に赤。面白い。
○関根正二「三星」「信仰の悲しみ」:「信仰の悲しみ」の方に意外と悲しみを感じない。「三星」の方が良い顔に見えるな。
○青木繁「男の顔」:傲慢さ漂う「オレ様」自画像。やっぱ青木はこうでないと。
○ギュスターブ・モロー「雅歌」:小品ながらも色彩の素晴らしい作品。
○古賀春江「深海の情景」:竜宮の使い、鮫、船、竜のおとしご、鰹、シャコ貝などのかかれた幻想的な画。
○イヴ・タンギー「聾者の耳」:ダリを思わせる形ながら、色彩が違う。
○マックス・エルンスト「つかの間の静寂」:赤・青・黄に照らされた石化した森の風情。
○藤田嗣治「血戦ガダルカナル」:遠くに雷光がきらめき、手前では人種すらも分かりにくい闇での殺し合い。作者が意図的であったかどうかは別として、この画を見て思うことは戦争肯定ではなく、「反戦」である。
○ワシリー・カンディンスキー「尖端」:実物の画を見ると只者ではないのが分かる。

また、類似テーマの作品を対決するかのように並べて配置しているのも面白かった。以下の勝敗は私の勝手な好みなので、真に受けないようにして欲しい。

○クロード・モネ「睡蓮」VS菱田春草「四季山水」:空気感VSシャープさでドロー。
○児島虎次郎「ベゴニアの畠」VSジョヴァンニ・セガンティーニ「アルプスの真昼」:洋画という相手のホームタウンに踏み込んだ児島が勝ちに近いドロー。
○ピエール・スーラージュ「絵画」VS横山操「塔」:立体感で横山の勝ち。
○岸田劉生「麗子肖像」VSアンリ・マティス「画家の娘」:リアル追及で岸田の勝ち。
○ピカソ「頭蓋骨のある静物」VS靉光「眼のある風景」:目力(めぢから)で靉光の勝ち。
○ジョアン・ミロ「夜のなかの女たち」VS棟方志巧「双仏」:北国魂に共感し、棟方の勝ち。
○ルノワール「泉による女」VS土田麦僊「湯女」:私がルノワール嫌いで土田の勝ち。
○ゴーギャン「かぐわしき大地」VS萬鉄五郎「裸体美人」:ゴーギャン作品の悲しみの表情が楽園に似合わない。何も考えていない裸体美人の勝ち。

何となく東洋圧勝の結果になってしまった。常設展も駆け足で眺めて、さあ、次は新宿の損保ジャパン東郷青児美術館だ。「ヨーロッパ絵画の400年 ウィーン美術アカデミー名品展」を見る。感想は以下。



○クラナハ工房「聖ドロテア」:微笑と女らしさが漂う作品。
○ルーベンス「三美神」:花びら・空・樹、描写力がすごい。思わず「パトラッシュ、僕なんだか眠くなってきたよ…」とフランダースの犬ごっこをしたくなったほどである(意味が分からん)。
○ムリーリョ「サイコロ遊びをする少年たち」:遊んでいるだけの少年達が何か神秘的にも見えてくる。
○ニッケレン「花瓶のある静物」:こういう精密な静物画、好きだなあ。
○ローベルト・ルス「ベンツィンガー・アウの早春」:樹木と水溜りの精密描写にビックリ。

あまり込んでいないところも良かった。午後3箇所で美術館巡りは終了。上野界隈でもっと興味深い展覧会をやっているのだが、今年中にもう一度東京に来る予定(マイレージが溜まったのだ)なので、それは次回ということで。

続く