今日の見るものはまずは智積院だ。ここは寺としてはともかく、長谷川等伯一派の(92)大書院障壁画があるのだ。この障壁画をかなり近距離から、一人で見ることができた。
・松に秋草図:秋の草の繊細さが表現されている。ススキの葉のカーブも見事だ。
・楓図:先に桜図を等伯の息子久蔵が描いたのだが、その後、久蔵は急逝。息子への思いもあったのだろう、その後に等伯が描いた作品である。桜図に対比させるため、楓をあえてど真ん中に描いた力作だ。しかしその大胆さとともに、小さな草花の繊細さも見てとれ、全体として華やかにも見えるという、矛盾がありそうなのに完成品として結実した素晴らしい作品である。
講堂では現代作家の田渕俊夫による「日本の春夏秋冬」という墨絵があったが、これもなかなか良いものだと思う。さあ、次は三十三間堂に行こう。
いよいよファイナル国宝だ。
(93)三十三間堂
(94)木造風神・雷神像
(95)木造二十八部衆立像
(96)木造千手観音坐像
と、三十三間堂の誇る物量作戦だ。特に1001体ある木造千手観音立像は、最初のうちこそ個別の仏像として見ていられるが、次第に背景の描き割りにしか見えなくなってくるという、恐ろしい数の攻撃である。「これでもか!」という威力は、最強の寺だと思う。もちろん造形的にも、二十八部衆なんかは見どころがあって、修学旅行生があっという間に通り抜けていくなか、観覧には相当な時間がかかる。
しかし、ざっと数えると99個あったはずの国宝だが、記事を描きながら数えてみると96個ということになってしまった。記事タイトルにウソがあるが、面倒だから直すのはやめておこう。東寺の仏像のカウントの仕方が、ちょっと過剰だったのが原因のようである。
さて、雨も降ってきたし京都駅に戻ろう。帰りの飛行機が19時台なので、それまでどうやって時間をつぶそうか。まずは商店街でお土産購入。それから少しでも時間がつぶれればよいかと、伊勢丹の「にゃんとも猫だらけ展」を見に行こう。
伊勢丹のエスカレータで7階に上がるが、これがちょっとした驚き。普通、エスカレータは各階毎に方向が逆向きになりジグザグに上がるのだが、ここでは真っ直ぐ一直線で上の階へと上がっていくのだ。
→写真では2フロアしか見えないが、最上階までこのまま真っ直ぐエスカレータがある。
ここで階段落ちをやれば、数百段は落ちられるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。美術館「えき」KYOTOという所で展覧会がやっているのだが、デパートの中にある展示場とは思えない、ちょっと立派な会場で良かった。
まあ、それ程作品に期待をしている訳ではなかったのだが、意外と充実した展示であった。浮世絵に猫そのものが描かれた作品もあるが、着物やうちわの模様になっていたり、かんざしが猫型であったり、江戸時代はすっかり猫を飼うことが定着していたようである。
浮世絵師としては国貞、国芳、春信、揚州周延、月岡芳年などの作品が多かったかな。数は少ないが広重作のは色彩が良かった。
個別の作品としては、東海道五十三次・猫だじゃれといった作品が面白い。例えば、日本橋には、かつぶしが2本描かれており、これは「二本出汁」というだじゃれなのだそうだ。それから、あきんどづくしという作品では、猫の魚屋、狐の寿司屋(いなり寿司)と言ったように、あり得ない組み合わせが描かれている。
結構充実の展覧会で、国芳が天保の改革を皮肉って、落書き調で描いた作品までみることができて、大満足。非常に良かったが、時間がまだまだあまる。京都駅内に限界を感じ、あてもなく神戸に移動してみることにした。