目の前にある6つの握りずし。一見、ふつうの全国チェーン(ひと皿税込105円)にもありそうな寿司たちですが、なかなか食べることができないような珍しい魚の寿司も混ざっています。
まずは左から。
一番左はヒラマサSeriola lalandi Valenciennesです。一見、同じ属の「ブリ」にも似ていますが、味はブリよりも繊細、養殖のブリのような脂はありませんが、逆にブリ特有の「くさみ」もなく、とても美味しいものです。実は私は大物釣りには縁というものはなく、なかなかこの種を食する機会がなかったのですが、今回ようやく食する機会に恵まれることに。長崎県で定置モノだそうです。
左から2番目はアコウダイSebastes matsubarae Hilgendorfです。アコウダイはフサカサゴ科、メバル亜科の仲間で、深海性の種類です。メバルと同属とはいえ、大型で成魚は60cmを超えます。深海釣りの対象魚とされています。この個体は口が開いてしまっていますが、しょうがない。
寿司のほうは、歯ごたえがよかったです。肉は見た目通り白身で、カサゴやメバルなどと比較してもずっと美味しい。味も薄いですが、特有のものがありました。ほか煮つけや酒蒸しも美味しいものでした。
左から3番目はトビハタTriso dermopterus (Temminck and Schlegel)。ハタという名前がついていますが、メジナの仲間です。というのは嘘で、ハタに見えない外見ですが、「ハタ」の名前がついていることからもお分かりのように、ハタ科の仲間です。1属1種とされていますが、他にもトビハタ属に含めるべきではないかというものが何種かいるそうです。
この種も美味でした。ただし歯ごたえなどはアコウダイにやや劣るというのが正直な感想でした。ハタ科はフサカサゴ科と外見が似ていたり、学者によってはこの2つのグループが近い仲間だと考えるほどですが、味では差が出てきました。トビハタの詳細については近日また書きます。
一つおいて、右から2番目の魚は、キントキダイ科のオキナワクルマダイPristigenys meyeri (Günther)です。独特な横縞模様がある種類、甲子園球場で販売するのがよろしいでしょう。今回食した中でもアコウダイと並ぶほど旨い種。歯ごたえはいまいちですが味がある種類です。調理の際に難があるとしましたら、鱗が硬いこと。一般のご家庭では皮を引いてしまえばよいかもしれません。ただ本種はごくまれにしか市場に入らない、珍しい魚です。オキナワクルマダイについてはまた後日書きます。
一番右の魚はキンメダイ科のキンメダマシCentroberyx druzhinini (Busakhin)。日本ではあまりなじみがない魚ですが、南半球のオーストラリアや、ニュージーランドではよく似た種が分布し、重要な食用魚となっています。今回は小ぶりな個体が1匹のみで、何か物足りなさを感じました。しかし皿に並んでいるメンバーがメンバーですから仕方がない。煮つけの方がおいしいかもしれません。
そして左から4番目はタイセイヨウサケSalmo salar Linnaeus、所謂アトランティックサーモンです。本当はマスノスケか、サクラマスあたりがよかったのですが、何れもこの時期は高い、特に前者は養殖のもの以外はなかなか出回らないので残念なものです。しかし個人的には寿司の宴にはサケは欠かせません。マグロがなくても、貝がなくても、玉子がなくても、イカタコがなくても、サケの刺身が必要なのです。
すばらしきこの握り寿司たちを食うことができるのはもう来ないかもしれませんね・・・お値段もかなり張りました。