今日はカレイ目カレイ科のヤナギムシガレイのご紹介。
ヤナギムシガレイ属は本種のみの1属1種。体が細長くて背鰭軟条数は84~102軟条。臀鰭軟条は72~81軟条。口は小さい、有眼側の鰓蓋上端は胸鰭より上にある、背鰭や臀鰭に明瞭な帯がない、有眼泡の背鰭や臀鰭の縁辺が黒くない、などの特徴で日本に分布するほかのカレイ科の多くの種と見分けることができる。
本種にそっくりなものに「ヒレグロ」というのがいる。ヒレグロ~という魚は多いが、「ヒレグロ」だけで標準和名である。ヤナギムシガレイとヒレグロとの違いは、ヤナギムシガレイは眼の上に鱗があるのに対しヒレグロにはないこと、ヒレグロの無眼側頭部には粘液孔があるが、ヤナギムシガレイにはそれがないことにより区別できる。またヒレグロは有眼側の背鰭・臀鰭縁辺部が明瞭に黒いことによりヤナギムシガレイと見分けることができる。
高知県足摺沖で採集されたもの
「東シナ海・黄海の魚類誌」という本によれば、日本近海産のものと黄海のものではややサイズが異なるらしく、黄海のものは体長35cmくらいになり、無眼側も黒っぽくなるなどの特徴があるという。これだけのサイズになるとは、と驚かされるが、私も足摺沖で30cmを超える本種を見たことがある。水深270mから漁獲されたものでかなり大きなものであった。同書によれば日本近海のものは全長32cmを超えるものは極めて少ないという。なお体長165mmを超えるものはすべて成熟個体とされている。
ヤナギムシガレイの分布は北海道~九州までの日本海、北海道~足摺までの太平洋岸、豊後水道、東シナ海。海外では朝鮮半島、済州島、東シナ海北東部、渤海などに生息している。分布という点でも北海道~山口県、千葉県銚子(愛知県にも?)に分布するヒレグロと見分けることが可能であろう。一方Fishbaseでは台湾にも分布するように書かれているが、本当かどうか不明。トップ画像の個体は茨城県日立市久慈沖で採集された個体。中トロ、小型問わず底曳網漁業により漁獲され、地域によって「ササガレイ」と称しているが、ここではムシガレイとして販売されていたと思う。「ホンモノ」のムシガレイよりもやや高めのお値段であったが、一夜干しにして焼いたものや唐揚げは非常に美味しい。なお学名は従来Tanakius kitaharaiという学名が使われてきたが、魚類検索第三版はTanakius kitaharaeとなっている。もちろんKitahararieではない。
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