今日は飼育しているスズメダイの仲間のご紹介。スズメダイ科・クロソラスズメダイ属のフチドリスズメダイ。フチドリスズメダイは八丈島にもいるようだが、一般的な分布域は琉球列島以南。全長10cmにもなる種である。今年4月に南の島の潮だまりで採集した個体。
基本的にクロソラスズメダイ属はサンゴ礁域の浅いところに生息し、主に付着藻類を捕食している。このフチドリスズメダイの幼魚もそうである。この個体を採集した場所は水深50cmほどのタイドプールで、網を二つ構えて追い詰めるようにして採集した。浅い潮だまりであってもちょこまかと動くので、なかなか採集が難しい。この場所ではフチドリスズメダイのほか、アイスズメダイもいるのだが、アイスズメダイの幼魚は全身が黄色であるためフチドリスズメダイとの見分けは容易。セダカスズメダイという種にもよく似ているが、セダカスズメダイは背鰭の縁辺に黄色斑がなく、胸鰭基部の大きな暗色斑がないので見分けることができる。
これほど小さいのが4月にもう出現しているというのは驚かされる。ほかには黄色い体に青い線のミヤコキセンスズメダイなども見られるのだが、ミヤコキセンスズメダイは幼魚カラーであってもある程度大きくなっていたのに対し、この個体は小ぶりで、生後数か月程度と思われた。そうなると早春から産卵しているのではないかとも考えられるのであるが。ただ、同属のクロソラスズメダイも同様に極小サイズの個体が2010年4月末に出現していたのを採集したことがある。なお、フチドリスズメダイはクロソラスズメダイと同じ場所では採集したことはない。フチドリスズメダイは主に荒磯のタイドプールに多いのに対し、クロソラスズメダイは内湾の枝サンゴ域に見られることが多い。なおクロソラスズメダイは「Farmerfish」とも呼ばれ、死サンゴについた藻類を育てることが知られているが、本種はどうであろうか。
飼育については別にどうということはない。しかしスズメダイ科の幼魚というのは混泳には注意が必要である。スズメダイ類は性格がきつく、他の小型の魚を攻撃することもあるからである。その一方でほかの魚に攻撃されると弱いのもまたスズメダイ科の幼魚の多くの特徴である。クロソラスズメダイの幼魚は丈夫な気もするが、意外にも弱い性格であった。餌は藻類食魚向けの万能フードである「海藻70」だけでなく、「メガバイトレッドS」や「シグマグロウ」なども与えている。なおバックの海藻はサボテングサの一種で、年末館林のアクアリウム店「チャーム」で購入したもの。昨年4月に訪れた南の島ではミドリイシやカメノコキクメイシだけでなく、かなりの数のサボテングサが見られた。それを再現したものである。
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