以前投稿していたと思っていたが、結局まだ紹介できていなかった魚。スズキ目・ワニギス亜目・トラギス科・トラギス属のアカトラギス。
トラギス科の魚は日本には少なくとも27種が生息しているが、生息環境は二つのタイプに分かれるように思う。温帯から熱帯海域の浅い岩礁域にすむものと、温帯のやや深い海底に生息するもの。前者にはオグロトラギス、コウライトラギスなどが含まれ、後者にはオキトラギスやユウダチトラギスがいる。アカトラギスもオキトラギスやユウダチトラギスと同様にやや深い海域、沖合底曳網漁業においては100~250mほどの海底で漁獲された。
アカトラギスの特徴は、体に太い黄色帯が5本前後あること。これによりオキトラギスやユウダチトラギスとは容易に区別することができる。
アカトラギス尾部
オキトラギス
オキトラギス尾部
ほかの特徴としては尾鰭基部の黒色斑の有無。オキトラギスとはこれによって見分けられる。オキトラギスでは明瞭な黒色斑が見られるが、アカトラギスには見られない。両種ともに尾鰭に細い線が入っていて綺麗である。
アカトラギス(2009年)
この個体は2009年に沖合底曳網、水深200mより深い場所で漁獲された個体。揚網中にスれてしまったようで、鱗がはがれてしまっているが、それでも特徴的な黄色の帯が見られるので、アカトラギスだとわかる。
トラギスの仲間は減圧に強いようで観賞魚として出回ることもあるが、少なくとも水温を10数℃に抑えなければ飼育は難しいだろう。動物食性で小魚、甲殻類、軟体動物などを捕食している。
この個体は宇和海の沖合底曳網漁業で漁獲されたが、関東近辺でも東京沖の船釣り、とくにやや深場にすむイズカサゴなどを狙っているとたまに釣れることがある。本命の魚に比べると小さめではあるが、かなり美味な魚である。トラギス科の魚は三大洋にすみ、南米のパタゴニアや、ニュージーランドではトラギス科の大型種であるオオトラギス、チリアマダイ(名前は「アマダイ」であるがトラギス科、昔は実際にアマダイ科とされたらしい)、ミナミアオトラギス(ブルーコッド)などが重要な食用種となっている。
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