今日は小笠原諸島から届いた珍しいトラギスの仲間をご紹介。スズキ目・トラギス科・トラギス属のオヨギトラギス。
オヨギトラギスの尾鰭は非常によくのび美しい。写真の個体では残念ながら尾があまり伸びていないが、この個体も獲れたばかりのときは長く伸びていたようである。
この種は雌雄で模様がやや異なるらしい。トラギスの仲間にはほかにも、この間このぶろぐでご紹介したオグロトラギスやカモハラトラギスなど、雌雄で模様が若干異なるのがいるが、この種では大きく変わり、赤い体に黄色い大きな斑紋があるのが雄のようである。今回の個体でも、その大きな斑紋を有しているのがわかる。魚類写真資料データベースの個体にはこの黄色い斑紋の後ろに赤い横線が明瞭に入っているものがいるなど、色彩には若干のバリエーションがあるのかもしれないと思わせた(横線はこの個体でも少し入っているように見える)。大型の個体は一見すると、イトヒキベラ属の大型種にも似た雰囲気であるが、それらの種に擬態しているのかもしれない。深場の魚と思われるが、浅いところでは15mから見られるようだ。
オヨギトラギスは以前からその存在が知られ、標準和名もあったが学名はまだついていなかった。2008年にセホシトラギス、オガサワラトラギスとともに新種記載がなされた。ホロタイプは相模湾の伊豆海洋公園で得られた個体である。分布域は相模湾・小笠原諸島のほか、伊豆諸島、屋久島、沖縄諸島にも分布するらしい。串本や高知県柏島などにも生息していると思われる。実際上記魚類写真資料データベースには高知県の深場で撮影された個体も掲載されていた。
食用としてよりも観賞魚としての需要がありそうだが、あまり多くは漁獲されないと思われる。Tea Yi Kai氏はこの魚の水槽写真?を有しているようだが、この個体についての詳細はわからない。釣りで漁獲されたのかもしれない。トラギスの仲間はほかの深場の魚、たとえば小型のハナダイ類などよりは減圧の影響を受けにくいようなのだ。ちなみに今回の個体は漁師さんから頂いたものを生かしていたのだが死んでしまったのだという。
なお、今回のオヨギトラギスは、東京都栽培漁業センターの川辺勝俊さんよりいただいたもの。このぶろぐではムカシクロタチやキスジアカボウなどをご紹介してきたが、ほかにも珍しい魚たちを何種か送っていただいた。いつも、ありがとうございます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます