今日もこの間届いた石垣島の魚をご紹介。スズキ目・チョウチョウウオ科・チョウチョウウオ属のフウライチョウチョウウオ。
フウライチョウチョウウオは5月に釣ったトゲチョウチョウウオに極めてよく似ている。特にここだけの写真を見るとトゲチョウチョウウオとほとんど違いはない。両眼の間にあるオレンジ色の細い線はトゲチョウチョウウオにもあるが、本種にも見られる。ただ体側に斜めに入るクロス状の線はトゲチョウチョウウオよりも若干細いかもしれない。また眼を隠す黒色帯もトゲチョウチョウウオのほうが明瞭だろうか。
こちらは尾部。こちらはトゲチョウチョウウオとは全く異なっている。まず背鰭の軟条部には、トゲチョウチョウウオにある黒色斑が見られない。幼魚のうちは小さな黒色斑が見られるが成長すると黒色斑が無くなる。その一方、体側後方の黒い線は成魚でも残っている。これはトゲチョウチョウウオにはない。また尾鰭に黒い線があるのもトゲチョウチョウウオとは異なる。さらに形態的な特徴としてトゲチョウチョウウオ(およびセグロチョウチョウウオ、レモンチョウチョウウオ、Chaetodon aurigaとトゲチョウチョウウオが別種とされたらC.aurigaも)では背鰭の後方が糸状に伸びるのに対しフウライチョウチョウウオでは伸びていないというのも特徴として挙げられる。これはサンゴ礁域で産卵するときに種を間違えないようにするという効果があるのかもしれない。
体側には傷がついている。そのため見栄えはイマイチかもしれないが、そのぶん耳石は安全に採取できる。このような配慮はとてもうれしい。
成魚は主に琉球列島、小笠原諸島で見られるが、幼魚は九州以北の太平洋岸・東シナ海岸にも見られる。毎年晩夏~秋にかけては関東沿岸でも本種の姿を見ることができる。ただし本種は基本的に熱帯性であり、越冬することはできない。採集して飼育することは不可能ではないが、本種の長期飼育は難しい。意外と幼魚の期間は臆病で飼いにくいのだ。餌自体はサンゴのポリプのほか、藻類、甲殻類などの底生動物を捕食するが、なぜか配合飼料に餌付きにくい個体も多い印象。
これまでチョウチョウウオの仲間はチョウチョウウオやセグロチョウチョウウオ、タキゲンロクダイなどの種を食してきたが、フウライチョウチョウウオはこれまで食したことはなかった。今回ようやく食べるのによいサイズのものが我が家にやってきたので、念願の初食となった。
フウライチョウチョウウオは今回我が家に2個体やってきた。手前が上の写真の個体。料理法は塩焼き。しかし同じように焼いたにも拘わらず、上の個体はクルッと丸まってしまった。手前のものは美味しかったが、奥のものは微妙な味であった。このように丸まってしまうメカニズム、そしてなぜ味が微妙なものになってしまうのかは不明。今後調査してみたい。
今回のフウライチョウチョウウオもヒレグロベラやミゾレチョウチョウウオと同じく、宮崎の「あらら」さんが石垣島の海人の方から頂いたものを譲ってもらったもの。ありがとうございます。
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