先日沖縄本島近海からやってきたサンゴ礁の魚たち。まずやってきたのが、スズキ目・イトヨリダイ科・キツネウオ属のキツネウオ。
キツネウオはサンゴ礁域に多く生息している種。チョウチョウウオ類とは異なり、淡い体色をしていてあまり人気はないが、よく見たら美しい色をしている。また幼魚は鮮やかな青い体に2本の黄色線が入るという、なかなか美しい色をしている。東インドー西太平洋に10数種が知られているが、日本にはキツネウオ、ヤクシマキツネウオ、イトタマガシラの3種が分布するだけである。ほかの種も分布は狭いものが多く、インドー太平洋域の広域にすむ、というものは皆無である。またイトヨリダイの仲間自体、分布域はインドー中央太平洋域に限られており、西は南アフリカまで見られるが、東はフィジーくらいまでで、マルケサス諸島やハワイ諸島には分布せず、アメリカの西岸や大西洋にはいない。地中海のものはスエズ運河開通後に紅海から入ってきた種のみである。
キツネウオの頭部。たしかに細長くてキツネみたいである。学名はPentapodus caninusというが、Canis、つまりイヌと関係があるだろうか。FishbaseのコモンネームではSmall-toothed whiptailと呼ばれている。小さな歯の鞭の尾という意味であるが、「Whiptail」というのはキツネウオ属の英名でもある。この属の尾鰭上葉、もしくは上・下葉が長く伸びるものが多い(一部伸びない種もいる。また幼魚は伸びない)。
体側の2本の帯がある本種は、琉球列島に多く見られるタカサゴの仲間にも似ている。追い込み網や釣りなどで漁獲されるが、味はタカサゴには及ばない。ただし塩焼きなどにして食べるとそこそこ美味である。日本においての分布域は屋久島と琉球列島で、九州以北からの標本に基く記録はあるか不明。九州以北ではキツネウオ属の魚としては、長崎魚市場で得られた個体をもとに記載されたイトタマガシラがよく知られており、この種は館山から九州までの太平洋・東シナ海沿岸に見られる。今回のキツネウオはHN「どぅハタ」さんから頂いたもの。ありがとうございます。
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