魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ホンベラ属交雑個体

2016年09月14日 14時55分30秒 | 魚介類飼育(海水)

もう8年前に「セイテンベラ?」というタイトルでぶろぐの記事を書いたことがある。「セイテンベラだと思うのだが、微妙に模様が違う」と記事で書いた。高知県の砂地で採集した、微妙な小さいホンベラ属の魚。

これは大当たりだったようだ。例の「ベラ&ブダイ」にこのベラが掲載されていた。244~246頁「ハイブリッドなベラたち」の中の「セイテンベラ×ミツボシキュウセンの雄相と思われる交雑個体」だそうだ。セイテンベラの雌相の場合頭部から尾鰭の基部にかけて黒いラインが入るが、この個体は途中でピンク色になり、尾鰭基部付近には黒い斑点がはいるというミツボシキュウセンの特徴も併せ持つ。

セイテンベラの雄の写真は私は持っていないが、興味がある方はググって調べてみてほしい。一目でふつうのセイテンベラと違うことがわかる。

ミツボシキュウセンの幼魚

ミツボシキュウセンの雌

ミツボシキュウセンの雄

ミツボシキュウセンの幼魚。幼魚の尾鰭基部付近には黒い点がある。尾の点ではセイテンベラでもでることがあるようだが、あまり明瞭ではない。ミツボシキュウセンの場合尾の点は小さく、成長すると大きくなるようだ。

ミツボシキュウセンで面白いのは、雄と幼魚では黒い斑点なのに、雌の成魚ではオレンジ色の斑になるということだ。幼魚は尾鰭基部付近に小さい黒色斑が二つ会うがその後雌は胃レンジ色の斑、大きな雄は黒色斑になるのだ。上の写真はそれぞれ幼魚・雄・雌の個体。

雄はこの仲間のほかの種類同様に極めて派手な色彩となる。頭部のピンク色の斑紋がオシャレだ。しかし幼魚は白っぽく、黄色い線が鼻に走る程度で、成魚と比べて地味である。成魚のほうが幼魚よりもきれいな色彩なのは、同じサンゴ礁の浅瀬に生息する魚の代表的なグループであるスズメダイ科の魚とは対照的なところである。

ミツボシキュウセンの吻

交雑個体の吻

ミツボシキュウセンにも、セイテンベラにも、幼魚期には吻部に黒色点がある。成長して6cmほどになった個体にも、交雑個体にはこの黒色斑があった。黒いゴマをつけた子供みたいであり、かわいいものである。

セイテンベラの分布域は八丈島、和歌山県、高知県柏島、愛媛県、屋久島、琉球列島であるが、琉球列島以南に多い。海外ではインドー西太平洋(東アフリカ~ニューギニア)に見られる種。ただし私は琉球列島でセイテンベラを見たことはない。一方ミツボシキュウセンは静岡県伊豆半島以南の太平洋岸、琉球列島、西・中央太平洋、ローリーショールズ、ココスキーリングに分布する種。日本においてはとくに琉球列島に多く沖縄や喜界島の浅瀬では多くの本種の姿を見ることができる。

味のほうだが、沖縄ではあまり食されていないのか食味の情報はほとんどない。しかしミツボシキュウセンは名前からお察しできるようにキュウセンのように大きくなり、美味なものといえる。セイテンベラは食したことはないが、これも美味しいに違いない。ミツボシキュウセンは磯遊びでも採集できるし、投げ釣りでも簡単に釣れる。飼育についても非常に簡単で、60cm水槽でも長期飼育が可能。注意点としては1.夜間砂に潜って眠るので砂を敷くべきということ、2.小型の甲殻類はミツボシキュウセンの餌になってしまうおそれがあり一緒に飼育するべきでないこと、3.逆に大きな甲殻類には捕食されるおそれがあるため一緒に飼育するべきでないこと、である。この貴重な個体も、オトヒメエビに捕食されてしまったのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オビテンスモドキとオオヒレテンスモドキ

2016年09月12日 23時07分56秒 | 魚紹介

ベラ科モチノウオ亜科にテンスモドキという魚がいる。テンスモドキは入手したことがなく写真もないのであるが、名前に「テンス」とあるため、テンスの仲間であるとわかりやすい。写真はない。申し訳ない。ただしテンスモドキはテンス属ではなく、テンスモドキ属という別属の魚である。テンスモドキ属は日本には1属1種が知られているだけの小さなグループであるが、種標準和名に「テンスモドキ」とついている魚は日本にもう2種が知られている。

まずはオビテンスモドキ。日本では神奈川県以南の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島に分布する普通種であるが基本的には熱帯性の種である。成魚は黒っぽい体で体側には多数の白い斑点があるのが特徴。小さい個体は背鰭前方の棘が長く伸びるので後述の種と見分けることができる。サンゴ礁やその周辺の砂地に多く見られる魚である。

こちらはオオヒレテンスモドキ。オビテンスモドキに比べて細い体が特徴。日本では伊豆半島、八丈島、琉球列島、小笠原諸島に生息する。生息地はサンゴ礁というよりも内湾のアマモ場や海藻のよく生えた場所を好む。幼魚は枯れ葉のような色彩をしており、背鰭の前方の棘はすこし伸びる程度。体側には褐色の途切れた線が走る。

この2種は以前は「テンスモドキ属」とされてきたが、現在はそれぞれが別の種として扱われている。オビテンスモドキ属と、オオヒレテンスモドキ属である。ちなみにテンスモドキが含まれていた属はこの旧「テンスモドキ属」ではなく、ホンテンスモドキ属とされているが、現在はテンスモドキが含まれる属がテンスモドキ属となっている。つまりオビテンスモドキはオビテンスモドキ属、オオヒレテンスモドキがオオヒレテンスモドキ属、テンスモドキがテンスモドキ属となっている。

確かにこの3種は外観はテンス属の魚類と似ている。しかし標本を観察した結果、たしかにテンスモドキ属の魚はテンス属に似ているところがある。属の標準和名になっているテンスモドキは見たことがないが、その近縁種は観察している。一方私はオビテンスモドキとオオヒレテンスモドキはテンス属やテンスモドキ属よりは、ほかのベラの仲間に近いと思っているのである。もっともこれは私が勝手に思っていたりすることなので、あまり本気にしないほうがいいかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クギベラ

2016年09月08日 17時25分12秒 | 魚紹介

この2個体は同じ種類の魚なのだが、色彩が全く違う。

クギベラ雄

クギベラというベラ科の魚だ。上の緑色がきれいなのは雄、灰色と黒色の塗分けがきれいなのが雌で、色彩の違いは雌雄によるもの。もっとも、ベラの仲間は雌雄の色彩が大きく異なるものが多い。さらに雄の色彩をした雌もいるなど、魚の性というのは、なかなか複雑なものである。だから生殖腺をみないと雄なのか、あるいは雌なのかということは正確にはいえないこともある。ただ多くの場合便宜的に「雄」とか「雌」とかは色彩的なもので判断している。ここでもそうしたい。

クギベラ雄の吻

クギベラの特徴はなんといってもその口だ。口が細長く、サンゴや岩の隙間にひそむ大好きな甲殻類を啄むようにして食べる「海の鳥」である。そして英語でも「Bird wrasse」という。つまり「鳥ベラ」だ。小さな口ではあるが、上手く捕食する。そして小さな針で防波堤や磯で釣ることもできる。

クギベラの雌

雌の個体もまさしく、高知県の防波堤で釣れたものなのだ。分布域は千葉県から鹿児島県の太平洋岸、熊本県天草、屋久島、琉球列島、南大東島、尖閣諸島、小笠原諸島と、かなり広い範囲に生息する。本州から九州では幼魚が多いのだが、たまに成魚といっていいような大きさの個体が釣れることがある。海外ではインド洋のココスキーリング諸島から中央太平洋にまで生息する。広い分布域を持っていてもハワイ諸島には生息しない魚も多いのだが、クギベラはハワイ諸島にもすむ。インド洋にはほとんどいないのだが、本種とおなじクギベラ属のもう1種がインド洋や紅海にいる。

クギベラは、クギベラ属という独自の属に含まれている。クギベラ属の魚は、先ほど述べたように東インド‐太平洋域に広く分布しているクギベラと、南アフリカ東岸からアンダマン海のインド洋に生息する近縁種の2種が知られている。しかし、ニシキベラの仲間と近縁であると考えられている。

オトメベラ

ニシキベラの仲間は交雑個体が多く知られている。例のベラ・ブダイ図鑑にも6つの組み合わせが紹介されている(ただしニシキイトヒキベラ×リュウグウベラとされている個体は、ニシキベラ×リュウグウベラの誤記ではなかろうか)。このベラ・ブダイ図鑑には掲載されていないのだが、オーストラリアではオトメベラと、クギベラの交雑個体が知られている。このほかハワイ諸島では、ハワイ産のニシキベラ属であるサドルラスとの交雑個体と思われるものも知られている(GoogleでGomphosus varius hybridと検索すれば出てくる)。サンゴ礁の浅瀬を、胸鰭をパタパタさせながらおよぐさまはまさしくニシキベラの仲間そのものだろう。またクギベラの幼魚の色彩はなんとなく、ニシキベラ属のヤマブキベラと似ている。

飼育についての注意もニシキベラ同様。遊泳力が強く、成魚のペアを飼育するなら水槽は120cmくらいの大きい水槽が必要になる。ニシキベラ同様夜間は砂に潜らず、サンゴの隙間などで眠る。食性は動物食性が強く、小魚や軟体動物なども捕食するが小型の甲殻類には目がないので、それらとは一緒に飼育すべきではない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タレクチベラ

2016年09月07日 12時10分27秒 | 魚紹介

2008年の夏に石垣島で釣れたベラの仲間。カンムリベラ亜科・タレクチベラ属のタレクチベラ。

タレクチベラはそこらへんの磯で釣れるオハグロベラや、ササノハベラの類とは違う。引きが極めて強い。小物穴釣り用の竿で釣りあげるのは快感といえる。しかも針は小物用の「さより針」。いつ切られるかひやひやさせられる。

体は前半分が白っぽく、後ろ半分が緑色から青っぽい色彩。これは例のベラ図鑑によれば、雌相、または若魚の特徴らしい。シンプルだがわかりやすいきれいな色彩。それに青白い斑点が体側に現れるのだから、ぱっと見でもとても美しいベラだ。

体側の斑紋も特徴的だが、臀鰭の模様もとても美しい。臀鰭は黒く、縁に赤と青の線があり、そして黒い地色に青い斑点が散らばっている。一方尾鰭は黄色っぽく青白い斑点がある。

成魚は全長80cmになる大型種。成魚の雄は体が全身緑色で、特徴的な模様が体側に出てくるためブダイ類と思った人もいるようだ。ブダイの仲間のうち、サンゴ礁域で多く見られるアオブダイの仲間とは唇が分厚くなり。「たれくち」といって歯板を形成しないことが異なる。幼魚は緑色の体に細い横帯が数本入る。基本的にはサンゴ礁域に生息する種類であるが、幼魚は相模湾、三重県、高知県などでも見られる。ただしほとんどが幼魚であり、成魚は主に琉球列島以南に分布。海外では紅海をふくむインド—太平洋域のサンゴ礁でふつうに見られる。

シマタレクチベラ

タレクチベラ属は3種が有効とされ、日本には2種が分布している。タレクチベラ属のもう1種、シマタレクチベラは本種よりもカラフルなベラで、琉球列島のサンゴ礁域では多く見られる種である。シマタレクチベラは和歌山県以南、インドー太平洋のサンゴ礁域に分布している。写真は冷凍していてあまり色がでていないのだが、生鮮時はもっと緑色が強い。タレクチベラと似ているが違いは体側の斑紋。成魚でも体側に複数の黒い帯が出ているのだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カミナリベラ

2016年09月04日 13時51分28秒 | 魚紹介

夏の終わりになると、磯ではベラの幼魚が目に付くようになる。ホンベラの子は緑色っぽいので目立つし、ブチススキベラは逆に枯れた海藻に擬態していて目立たない。オハグロベラも海藻の中にいて、茶色い体が保護色になっているのだろう。

高速で泳ぎ回るカミナリベラもまた、この時期の磯ではよく見ることができるベラの一種である。ベラ科・カンムリベラ亜科・カミナリベラ属。日本では新潟県佐渡・千葉県から琉球列島にまで分布し、日本海岸でも見ることができる。

カミナリベラの雌

幼魚は体に暗色の縦線が2本あり、背鰭後方に青黒い斑がある。雌は体に縦線があり、頭が赤く腹部に黒い点があるだけという色彩の種であるが、性転換して雄になると青色の線が出て派手な色彩になる(写真はない)。ベラの仲間は雌雄あるいは幼魚と成魚で色彩や斑紋が大きく異なっているものが多く、それぞれ別の種標準和名がついていたりした。

カミナリベラの幼魚

カミナリベラの生息する場所は浅海の岩礁域で、紅藻がある場所で多く採集したような記憶がある。あるいはその周辺の砂底。四国の太平洋岸では数が多くごく普通に見ることができた。しかし防波堤で釣ることはできなかった。防波堤でも数多く見られ、釣れなかった理由は不明だが、ニシキベラなどほかの食欲旺盛なベラがいたからかもしれない。だから今回紹介しているカミナリベラはすべて小型の個体なのである。夜間は砂の中で眠るのだが、私は夜間岸壁についていた海藻の中から本種の幼魚を採集したことがある。その時は下はごろた石で、眠れそうな環境ではなかったからかもしれない。

アカオビベラの幼魚

琉球列島でも見られるという本種であるが、あまり見たことはない。この間訪れた喜界島ではアカオビベラが多かった。アカオビベラはサンゴ礁の礁湖で小さな群れで見られた。前回は港の奥の方でハラスジベラも見かけている。このほか私は採集していないのであるが、オニベラも採集されている。しかしカミナリベラは全く見ていない。

カミナリベラに似ているものでカットリボンラスStethojulis interrupta (Bleeker, 1851)というものもいるが、雄の体側の帯がつながっているのが特徴のようだ。カットリボンラスは日本からの記録はなく、フィリピンから南アフリカまでのインドー西太平洋に広く分布し、日本や朝鮮、中国、あるいは台湾、東沙といったところにはカミナリベラが分布している。実際にこの2種は別種とされていることが多い。

ただしカミナリベラとカットリボンラスの差異は小さいともいわれ、亜種とされたり、同一種の地域変異とされている場合もある。ちなみに日本産魚類検索 第三版のカミナリベラの学名はStethojulis interrupta terina Jordan and Snyder, 1902であり、加藤昌一氏によるベラ&ブダイ図鑑でのカミナリベラの学名はStethojulis interruptaの学名である(記載者は記述無し)。一方比FishbaseではStethojulis terina Jordan and Snyder, 1902とされているものがカミナリベラなんだと思われる。いずれにせよこの問題の解決が待たれるところである。

カミナリベラ属の魚の飼育は意外と難しいところがある。元気に飼育できていると思っても砂から長いこと出てこなかったりする。強い性格の魚臭われると引きこもりになってしまうのかもしれない。おとなしい魚との飼育がよいと思われる。この仲間は観賞魚店で販売されることはほとんどないため、飼育したいと思ったら自分で採集してくるしかない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする