NHKがせっせと紅白歌合戦のPRをしている。
なんだか今年は、あんまり見たい気持ちが強くわいてこない。見ないで過ごすとしたら、何をしようか、という感じだけれど、、、
鈴木明子選手のブログに、「紅白歌合戦の特別審査員をします」とあるのを見て、やっぱり見ようかな、という気になってきた。
きれいな振袖なんか着てくるかな? あっこちゃん それが楽しみってのもなんだけど^^;
日本経済新聞のWeb版で連載されているスポーツコラムに、「フィギュアの世界」という特集がある。丁寧に掘り下げた記事で面白く読んでいるのだが・・・
全日本選手権が終わって、新たに記事が出た。「全日本で感じた高橋と羽生の差」(会員限定記事だが、閲覧本数に制限がある無料会員はすぐ登録できる)、おおむね「そうだよね~」と納得できる内容だが、ちょっと気になる記述があった。
羽生結弦の演技について。「意気込み過ぎたのか、SPでは4回転が3回転になり、連続ジャンプも3回転―3回転が3回転―2回転になって、大きく出遅れた。」「4回転が3回転になってしまったSPの後、『練習でも3回転になることはあったが、最初からやり直していた』と話した。3回転になるミスを想定して、そのまま最後まで通す練習はしていなかったそうだ。」
これだけ読むと、冒頭の4回転が3回転になるミスを想定した練習をしていなかったために、連続ジャンプもうっかり3回転+2回転になってしまったように取れる。
しかし、テレビ放送では全然違う捉え方を伝えていた。
「最後のジャンプにトリプルトウループをつけない。これは最初のジャンプが4回転でなく3回転になってしまったために、コンビネーションではトリプルトウループを使えないということがわかっていて、(以下略)」(本田武史)「冷静なんですね」(実況アナ)
「最初の4回転の失敗の仕方が、一番悔しいんですね。4回転回り切って転ぶより、3回転になってしまったことでコンビネーションにトリプルが使えないので、ほかでいかに点数を取るかということを考えながら滑らなければいけなかった」(荒川静香)
「4回転が3回転になってしまって、コンビネーションのほうで3回転しちゃだめってことはわかってたので、そこは冷静にできたかなと思います」(本人インタビュー)
これを見ていればルールを知らなくても、「なんだかわからないけど、羽生はコンビネーションで“あえて”3回転でなく2回転を跳んだらしい」とわかる。スポーツナビでもこの点の記事があった。
ルールでは「(ショートプログラムで)ソロジャンプはジャンプ・コンビネーション中のジャンプとは異なるものでなければならない」とされる。違反するとそのジャンプは無効として丸ごと0点になる(キックアウトと呼ばれる)。
コンビネーションのセカンドに跳ぶことができるジャンプは、踏み切り足の関係からトウループかループに限られる。ループは踏み切りのとき反対の足のトウをつかないので、トウループより少し難しい。単独ジャンプなら3回転はそれほど難しくないが、コンビネーションのセカンドに跳ぶには、ダブルが普通。
普段からコンビネーションにループを組みこんでいない場合、ちょっとした加減で回転不足を取られやすいループは、とっさに跳ぶのは難しそうだ。羽生はトウループを選択し、両手を上げることでGOEで少しでも加点を稼ごうとした。
“3回転になるミスを想定して、そのまま最後まで通す練習はしていなかった”にもかかわらず、この判断をして実行できたことの方が、すごく重要な事実ではないだろうか
仮に、羽生が“うっかり”コンビネーションで3回転トウループを跳んでしまったとする。ジャッジスコアを見るとコンビネーションで8.28稼いだが、それを差し引くとSPの得点は66.04になってしまい、これは7位に相当。なんと、フリーを最終グループで滑れなくなるところだった それでもフリーであの点が出せれば余裕で3位にはなれたが、優勝争いに名乗りをあげようとする選手にとって、最終グループでないのはちょっと痛い。
第3グループはジュニアの宇野昌磨や日野龍樹も入ってたグループ。小塚崇彦→高橋大輔→と続いた後に滑るのと同じ雰囲気であるはずがなく、同じ演技ができた保証はない。経験という点でも、全然違うものになってしまう。
羽生は1回転少なくすることで、そんな危機も回避したのだった。
記事にある「ISUがお手本として取り上げる、小塚の『スケーティング』と高橋の『音楽との同調性』」が二人の基軸なら、羽生の基軸は「状況判断の確かさ」かもしれない。新採点方式を生まれながらに知っているかのような、どこで何をしたらorしなかったら点が取れるかを瞬時に判断してその通りにできる力。
昨季のGPシリーズのフリーで似たような失敗があり、それを全日本や四大陸に生かした。さらに今季のロシア大会では、優勝以外はファイナルに進めないぎりぎりのところで、予定と違ってもその瞬間ごとに最善の手を尽くして、超・僅差の優勝を勝ち取った。羽生選手のこの計算力(?!)こそ、「10代の頃から卓越していた」と後に語り草になるかも。
それにしても、どうして筆者はこんな書き方をしているんだろうか? フィギュアスケートの特集コラムを書くのに、ルールを完全に把握してないのも問題だけど、毎年のように変更があるからそれはなかなか大変。でも、ルールを知らなかったとしても、テレビ放送を見たらわかりそうなものだが、、、
もしかして、テレビ放送はチェックしてなかった? 会場で取材してたら、逆に解説者たちの話は聞けないわけで^^; しかし、速報記事ではないコラムで、発表は27日。録画を見る時間は十分にあったはず、、、
せっかくのコラムなのに、これでは日本経済新聞と、フィギュアの世界と銘打つ特集の名がすたる。早く気づいて~~~
<追記>
自分で読み返して、なんだかわかりにくいので補足。
ジャンプに関するルール(P14~15)より引用すると、
〈ソロ・ジャンプ〉 ショートプログラム
“ソロ・ジャンプはジャンプ・コンビネーションの中のジャンプとは異なるものでなければならない”
〈ジャンプ・コンビネーション〉 ショート・プログラム
“シニア男子において、ジャンプ・コンビネーションは2つの同一のあるいは異なるダブルまたはトリプルまたはクワドラプル・ジャンプから構成される。”
“全てのカテゴリーにおいて、含まれる2つのジャンプは、、ソロ・ジャンプと異なるものでなければならない。”
さらに、明確化(P15~18)のショートプログラム・ジャンプの繰り返し(P17)には、
“ジャンプ・コンビネーションのみ2つの同一のジャンプを含んでもよい。”
“同じ名前であるが違う回転数のジャンプが繰り返された場合、評価される。”とある。
羽生選手の予定のジャンプは、4回転トウループ+3回転トウループ(コンビネーション)・トリプルアクセル・3回転ルッツ。これまで、冒頭の4回転で転倒したりしてコンビネーションにできなかった場合、3回転ルッツに3回転トウループをつけてコンビネーションとしてきた。
今回は3回転トウループをソロ・ジャンプとして跳んでしまった形。即座に3回転トウループをもう1回連続で跳べば、3回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションにすることができたが、それができるような着氷態勢ではなかったので無理だった。ソロしか跳んでないので、次はコンビネーションにしなければならない。そして3回転トウループを使ってしまうと、「繰り返し」としてコンビネーション全体が0点にされる。
というわけで、基礎点が低くても、コンビネーションとして有効にするために、3回転ルッツ+2回転トウループを跳んだ。同じトウループだけど回転数が違うのでOK。
・・・という判断を、「練習してなかった」けど、ぶっつけ本番でできたわけで・・・
「意気込み過ぎたのか、SPでは4回転が3回転になり、(そのため)連続ジャンプも3回転―3回転が3回転―2回転に(せざるを得ないことに)なって、大きく出遅れた。」ということなのでした。