最近は誰もが防衛力の強化を口にするようになったが、実際に何をどうすればよいかについては、判断材料がないために、大部分の人は抽象論にとどまっている。私たちが目を通すべきは『自衛隊新戦力図鑑2022ー2023』ではないかと思う。
今の自衛隊の装備がどうなっているか、分かりやすく解説されているからだ。とくに読みごたえがあったのは、南西諸島に廃部が進む陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾である。すでに2014年から採用されているが、命中精度が向上し、射程も延伸され、敵の妨害電波にも強くなったという。当然は、アメリカからトマホークを購入して対処するとしても、スタンド・オフ・ミサイルとして期待を集めており、射程を1000キロ以上にすれば、我が国の反撃能力は格段に高まるとみられている。一日も早く実現すしなくてはならない。
また、航空自衛隊の主力戦闘機であるF15Jについても、現状がどうなっているかを克明に描いている。現在200機が運用されている。アメリカではお払い箱になる機種であるが、70年代に入カツされたにもかかわらず、電子装置の換装や、空対空の戦闘能力を強化するなどの改良を重ねることで、次期主力戦闘機が登場するまで、日本の空の守りを担うことになっている。問題になっているのは、多様化改修計画があるにもかかわらず、改修の初期費用が高騰していることで、その計画そのものが頓挫しつつあることだ。防衛力強化の目玉にすべきではないかと思う。
尖閣や先島諸島が有事になった場合には、海上自衛隊の潜水艦が活躍が期待されるが、現在は「たいげい型」が任務に就いており、22隻体制となっている。搭載バッテリーをリチウムイオン電池にしたことで、航行自由度も高く、航続期間も長くなった。ハープ対艦ミサイルも装備しており、対地攻撃にもl転用できる。
陸上自衛隊の注目は、最大時速100キロで移動できる16式機動戦闘車である。輸送機や輸送艦での運搬も可能で、都市部や島嶼部での火力支援が目的である。武装も105ミリライフル砲ということで、普通の戦車とそん色がない。
現状を踏まえて、どこに力を入れるべきかなのである。いうまでもなく、継戦能力を高めることは最優先されなければならないが、装備に関しても無関心ではいられないのである。
今日の日曜報道THEPRIMEにエマニュエル・トッドが出演していた。そこでトッドが日本の核武装に必要性について話したことの意義は大きかった。
トッドは名著『帝国以後』(石崎晴己訳)の「日本の読者へ」のなかでも、明確に言い切ったわけではないが、遠回しにそのことを述べていた。今から19年前のことである。
「もしアメリカ合衆国の外交的・軍事的無責任性が今後ますます確実となっていくとしたら、日本が軍事的。戦略的により自立的でないことを、もっと明確な言い方をするなら、世界の均衡の再編成によりよく参画するためによりよく武装されていないことを、ヨーロッパ人たちは大いに悔やむことになるかも知れない」と書いていたのだ。その時点では、広島や長崎のこともあり、深くは言及しなかったが、今回の発言と大差ないのである。
それは一つの見識ではないだろうか。このまま中国の属国になり、我が国の分断が深刻化するよりは、核武装をして自立の方向に一歩踏み出せば、混乱は最小限におさえられるからだ。中国との付き合いも対等の関係となり、最悪の事態は避けられるかも知れない。その部分をトッドは重視しているのだ。
これまでの日本の防衛外交は、米国一辺倒で事足りた。しかし、今後はそうではない。日本自身の力で舵取りをしていかなくてはならないのだ。トッドの主張を無視すべきではないのである。