保守主義が立脚すべきが家族であることは言を俟たない。しかし、欧米全体がそうであるように、その根本が我が国でも壊れつつある。それで本当にいいのだろうか。よく例に出されるのがスウェーデンである。人口は一千万にも満たず、森と湖の国として知られるが、日本とは違って徹底した個人主義である▼八木秀次は『論戦布告』において、スウェーデンの問題点を指摘している。宗教が影響力を失い、社会民主党の掲げた「国民の家」構想によって、家族や家庭ではなく、社会全体で助け合うという制度が選択された。このため家族を維持する結婚という制度も形骸化してしまった。離婚率50パーセントという数字がそれを物語っている。「一家の主人の扶養の義務」すらも、法律で撤廃された。夫婦であっても、個人の経済的な自立が最優先されるのである▼日本もそこに向かっていることは確かである。保守派である八木の処方箋は「家族の再建」である。「我が国でも豊かで平和な社会の中で家族は確実にその結束力を失い、もろく壊れやすいものになっている」との現状認識の点では、民法改正論と一致しつつも、「家族の解体・崩壊の傾向をおしとどめること」を主張するのである。父親と母親の性差による役割の分担を確認することで、社会解体現象に歯止めをかけなくてはならない。孤独な個に閉じこもるのではなく、大地に根差した自然な営みとして、過去から未来に命をつなぐ家族にこそ目が向けられるべきなのである。
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