創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

「わたしなりの枕草子」#345

2012-03-14 08:42:25 | 読書
【本文】
二百八十七段
 衛門尉(ゑもんのぞう)なりける者の
 衛門尉(ゑもんのぞう)なりける者の、似而非(えせ)なる男親を持たりて、「人の見るに面伏(おもてぶ)せなり」と、苦しう思ひけるが、「伊予の国よりのぼる」とて、浪に落とし入れけるを、
「人の心ばかり、あさましかりけることなし」と、あさましがるほどに、七月十五日、「盆たてまつる」とて、急ぐを見給ひて、道命阿闍梨(だうめいあざり)、
  わたつ海に親おし入れてこの主の
  盆する見るぞあはれなりける
と、よみ給ひけむこそをかしけれ。

【読書ノート】
 衛門尉(ゑもんのぞう)なりける者=不詳。似而非(えせ)なる=身分の卑しい。浪に落とし入れ=(親を)海に落とす。
 七月十五日=盂蘭盆供養の日。急ぐ=準備する。
 わたつ海=海の中に。おし入れて=「て」は逆説。ておきながら。