つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

藤蔭道子さんの「夜顔日記」

2010年11月04日 | 文化
              藤蔭道子さんの「夜顔日記」

小学校の同期生である作家の藤蔭道子さんから著作本「夜顔日記」が送付されてきた。
家の土地に夜顔を植えてある。日記として綴ってあるが、夜顔の状況が毎回掲載されている。
作家の日常生活が基本にあるので、どうしてもダブらせて読んでしまう。

前回出版した「慕情」にも言えるが、藤蔭道子さんの文章はとても情緒があり、読みやすくついつい吸い込まれてしまう。文章表現は相当勉強したものと思われる。
この中に小学校の恩師である辻田晴子先生のことが出てくる。

七月×日 辻田先生から電話があった。昨年末の「たんぽぽの会」では、骨折して入院中とのことで出席できず、代わりに先生の息子さんがお見えになり、入院の経過などを話されたのだった。もう、お元気になったかしら・・・と思いながら、金沢から、甘いものを送ってみたのだった。
先生、お元気そうで安心しました。もう、すっかりよろしいんですか? とたずねると、――あら、わたし、入院なんかしてたのかしら。忘れちゃったわ。元気、元気。お天気さえよければ、そこいらへ歩いて出かけたいのよ。でも、若い人に迷惑かけてはいけないからね。ウチにいるだけなのよ。
つきぬけた明るい笑いに、思わず引き込まれてしまう。
そして、あなたの仕事は死ぬまで続けられるのだから、がんばりなさいよ。それには、健康でいること、といつもながらの励ましだった。

その後、辻田先生の思い出がいろいろと綴られていた。小学校の恩師のことを詳しく覚えている藤蔭道子さんも凄いが、いつまでも教え子から恩師として尊敬される辻田先生も凄い。
辻田先生は、壺井栄作の「二十四の瞳」の大石先生のような人である。いつも児童のことを思いやり教師の道を歩むとともに、児童たちに心の優しさを諭してくれた人である。辻田先生を囲む同期会も定期的に開催されている。その恩師の辻田先生も90歳となっている。

◎藤蔭道子さんについて
 日本文芸家協会会員。室生犀星学会監事。
 著書に『虹と鎖』(1989年・菁柿堂)、『藤蔭道子集』-房総文芸選集-』(1990年・東銀座出版社)『小説和泉式部抄』(1993年・東銀座出版社 第1回室生犀星顕彰大野茂男賞受賞)、『桐の花・雪の日』(1998年・龍書房)、『風景のなかで』(2003年・龍書房)、『慕情』(2009年・龍書房)などがある。

◆藤蔭道子著作本「夜顔日記」 龍書房発行 定価1000円

(11月4日記)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする