ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2011.8.4 昨日の四冊

2011-08-04 06:35:31 | 読書
 昨日読んだ本である。

 1冊目は高木慶子さんの「悲しんでいい 大災害とグリーフケア」(NHK出版新書)。
 帯には「涙をこらえないで。希望はそこから生まれます グリーフケアの第一人者が説く、悲しみに寄り添う心構え 日野原重明先生推薦」とあった。
 著者は阪神大震災で被災されている。現在、上智大学グリーフケア研究所所長。
 表紙裏見返しには「自分が抱えた悲しみから目をそむけず、人の悲しみからも目をそらさず、悲しみを希望に変えるにはどうしたらいいのか?人間の弱さに共感し、相手の人生を全面的に肯定するグリーフケア。日本社会全体が喪失感に覆われている今、その限りない可能性をやさしく説く」とあったが、グリーフケアには以前より興味があったので手に取った。
 本当に悲しいと人は涙を流せない、という。それでもきちんと悲しんで、その悲しみを乗り越えて初めて次に進めるのだ、ということを改めて思う。悲嘆を引き起こす原因には、愛する人、所有物、環境、役割、自尊心、の5つの喪失に加えて、6番目として身体的喪失―病気による衰弱、乳房、頭髪等の喪失―も含まれていることを確認する。今回、7番目として東日本大震災後に社会生活における安全・安心の喪失が加えられている。
 弱っている自分を認める勇気、相手を傷つける態度、悲しみへの寄り添い方として「評価しない」「口外しない」等はなるほど、と思う。そして深い悲しみの中にある人にとって「周囲から忘れられる」ことが何よりも辛いこと、「忘れていない」「いつも心にかけている」というメッセージがどれほど心強い励みになるのか、を思った。

 2冊目は城山三郎さんの「どうせ、あちらへは手ぶらで行く」(新潮文庫)。
 「そうか、もう君はいないのか」は亡き奥様との日々を綴ったものだが、これは単行本が出てすぐに読んだ。それまでは城山さんの本を手に取ることはなかったのだが、ちょうど自分と夫のことも考えつつ読んでいたら、夫から嫌な(というか何とも言いようのない困った)顔をされたのを覚えている。
 本書は氏の没後、その仕事場から9冊の手帳が発見され、それを編集部で整理したものという。「自身の老いを自覚し、見つめながら、限られた人生を最期まで豊かにしようとする姿勢、執筆への意気込み、友との交遊の楽しさ、家族への愛情、妻を亡くした悲しみ等亡くなる3ヶ月前までの感動の記録」と裏表紙にあるとおりだ。
「そうか、・・・」はテレビドラマにもなっていたが、氏の奥様への深い愛情を思うと、胸が締め付けられる。また、巻末にお嬢さんが「鈍々楽 どん どん らく」という文章を寄せておられるが、娘から父への想いにまた目頭が熱くなった。城山さんは4年前に亡くなっておられるが、昭和2年生なので私の父より1歳上。父の老いについて改めて考えさせられた。

 3冊目は橋本紡さんの「いつかのきみへ」(文春文庫)
 「偏差値よりもはるかに大切なことが世の中にはあるはずなんだ 初心を失いかけたあなたに贈るやさしい、やさしい物語」という帯に惹かれて、初めて読んだ作者だ。
 「清洲橋」「亥之堀橋」「大富橋」「八幡橋」「まつぼっくり橋」「永代橋」の6編の短編からなる。単行本「橋をめぐる いつかのきみへ、いつかのぼくへ」が文庫化にあたり改題されている。解説の笹生陽子さんの言葉を借りれば、「東京の下町・深川を舞台にしたもので、実在する橋を物語の軸として人々の現況が写し取られていく。老若男女のさまざまな視点と語り口が楽しめる。」
 大学受験を間近に控えた男子高校生の想い、バツイチワーキングマザーの心情、地に足をつけた生活者たちのありふれた日常なのだが、中でも婚約中のカップルが新居を求めて不動産屋をはしごする「まつぼっくり橋」、両親の不和に心を痛める千恵ちゃんとおじいちゃんの心の交流「永代橋」に心がほっこり暖かくなり、元気をもらった。

 4冊目はいわさきちひろ絵本美術館・編「ちひろのアンデルセン」(講談社文庫)。
 先日、いわさきちひろ美術館で購入したもの。「アンデルセン童話の世界に深く共鳴し、数多くの作品を描き続けた“いわさきちひろ”。くりかえし描いた作品を中心に、アンデルセンの様々なお話の絵を一堂に集め、ちひろ自身が語った言葉や取材旅行記などとともに、人の世の真実を描いたアンデルセンへの思いを浮き彫りにする。」との裏表紙。実際に美術館で目にした作品、家族にあてた絵葉書等を見、また美術館を訪れたような豊かな気持ちになった。
 そして研修の時に訪れたコペンハーゲンのアンデルセンの像を思い出し、文庫で持っている「絵のない絵本」をもう一度読んでみようか、と思った。


コメント (4)
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